08008.ホルモー六景
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万城目 学 産業編集センター
第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作だそうですが、この賞のこと知りませんでした。現在放送されているドラマ「鹿男あをによし」の原作者のデビュー作です。
タイトルだけでは内容を全く想像できない。梗概を読んでも何のことだか、本編読んだ後でもストーリーを説明するのはとても難しい。簡単に言うと、京都を舞台にした学生たちの、あるサークル活動を描いた青春(半分ラブ)ストーリー。このサークルがとっても不思議。「京都大学青竜会」という名前からして、とっても怪しげ。メンバーたちはとても不思議な力を会得し、「京都産業大学玄武組」「立命館大学白虎隊」「龍谷大学フェニックス」と「ホルモー」を戦うのです。最近の学生は私たちの頃とは全く違う恋愛感情を持ち、生活していると考えていたのですが、ここに描かれるのは、大昔から受け継がれているらしい「ホルモー」に翻弄されながらも、私が学生の頃と変わらぬ学生たちの生活。でも、大きく違うのは古式ゆかしい?「ホルモー」と現代的な「携帯電話」「メール」「コンビニ」。この対比がとてもユニーク。どれだけ生活が便利になっても、人間は古来よりのしがらみから逃れられないのでしょうか。適度の知的刺激、思わずあんぐりしてしまう展開、ちょっと胸キュンとなったりと、楽しく読めた1冊でした。
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吉永南央 文芸春秋
母は実家に帰り私を産みました。北関東にある市で、母の実家の近くには大きな川があり、その畔にある病院で私は産まれたそうです。この作品の主人公「杉浦草」76歳の日課はこの川原への散歩です。私の母の実家は紅雲町です。今は叔父が住んでいます。祖父母は私が幼い頃になくなり、ほとんど記憶がありません。私は九州に住んでいたので、母の里帰りも頻繁にはできなかったようですが、なんとなく居心地が良い街の雰囲気とこの川原へ従姉妹と遊びに行ったことはかすかに記憶があります。帯に「おばあちゃん探偵、走る!」とありますが、内容を端的に表しているとは言い難いコピーです。ミステリ・マガジンにも書評があったから一応ミステリの分類に入るかもしれませんが、杉浦草は自分のことを探偵だなんて思っていません。日常の生活の中で身近な人のことが気になると、知らんぷりはできず関わってしまいます。その関わり方も、お節介の押し付けではなくとてもよい感じです。登場人物は基本的に皆良い人。それぞれに事情を抱えながら普通に生活している。その普通のなかのちょっとしたこだわりや何かが事件になってしまいます。取り上げられる問題は深刻なものだったりするのですが、気持ちよく読めて読後は暖かい気持ちになることができました。私の記憶にある紅雲町もこんな気持ちにさせてくれる町です。
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岩村 暢子 新潮社
「変わる家族変わる食卓」で晒された食卓の実態、「“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死」で気が付かされた食卓の幻想。第3弾がこれ。クリスマスとお正月の食卓の実態から現代社会が抱える問題が浮き彫りになります。高校生の子供にサンタが実在すると信じさせることに注力する母親。イルミネーションの飾りつけは一生懸命なのに、料理の手作りは一切なし。お節を作る親を一切手伝わない子供。でも、一番の問題は「料理は手作りに限る」「日本の伝統は後世に伝えるべきだ」などと言いながら、一切を行動に移していないことだと思う。
「お節」は、裕福な家がお正月中使用人が休みなので、休み前に作らせたものだったのではないか。だったら、高級なお節セットを買うという行為はおかしくない。また、少なくとも、ちょっと前までは正月三が日は何もかもが休みだったから、食事をまとめて作っておく必要があった。現在では正月から何でも手に入るのだから、作り置きの必要は無い。クリスマスはキリスト教の行事。信者以外は何もすることは無い。滅多に作らない料理だったら調理済み冷凍食品のほうが美味しいに決まってる。でも、何もしないことへの罪悪感はだけはある。言い訳も用意されている。そこが問題。コンビニ弁当でもインスタント食品でもいいじゃないか。言い訳しないでどうどうと使おう。でも、それが私たちにとって本当にいいことなのかは考えるべき。
アマゾンのレビューはネガティブなものが多いです。まあ、この本の内容を信じたくない人が多いでしょうから。帯にある養老さんの「S.キングより怖い」は本当でした。
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岩村 暢子 勁草書房
「変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識」の続編。
「変わる家族~」では現代の家族の食卓について驚愕の事実が晒されました。もはや家族団らんの食卓は幻想に過ぎない、ということでしょうか。こんな娘たちに誰がした。親の顔を見てみたい。ということで見に行ったのがこの本です。
母親手作りの数品のおかずが並ぶ食卓に家族が揃う日本の伝統的光景は幻想だと最初に気付かされます。和洋取り混ぜた色とりどりのメニュー、クリスマスの御馳走や、正月のおせち料理、手作りのケーキやパン。これらは幼い頃に戦争で苦しみ、価値観を変えられた母親世代が、戦後家事の負担が少なくなることにより、一代で作り上げたものです。代々受け継がれたものではなかったのです。終戦により一夜にして思想を根底から強制的に覆された母親世代は、自分が信じるものが絶対に正しいと思う自信がないようです。自信がないから、子供たちに強く伝えることができません。せっかく作り上げた母親のノウハウが子供に伝えられることはなかったようです。
この本を読んで、食の問題だけでなく現代社会が抱えるいろいろな問題の中身が見えたような気がしますが、解決策は見えません。それにして日本が過去に犯した最大の罪、「戦争」。私たちの今を考えるにすべてに影響しているのですね。
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P・プルマン 新潮文庫
「ライラの冒険」3部作の完結篇。
パラレルワールド全体に渡る争いに完全に巻き込まれたライラとウイル。ライラは母親に拉致され一時はウイルと逸れてしまいます。再会を果たした二人は死後の世界にまで足を踏み込みます。一方、ウイルと同じ世界に暮らしていたメアリーも二人に出会うために別の世界に足を入れます。琥珀の望遠鏡を自ら発見、製作し、パラレルワールド全体に起こっている「何か」のヒントを見つけ出します最後まで読んでも、ハッキリとした結論は良く判らなかった。どうやら「死生観」について書かれたファンタジーのような気がします。人間が死ぬとどこに行くのか、すべての生は誰かにコントロールされているのか。すごく簡単に言うと、人間の幸せってなんだろうってことですね。大人になると失ってしまう何か、死んでしまうと何を失うのか、それを考えさせられる話でした。難しいこと考えないで、ライラが大人になるための冒険物語として読むのが正解かもしれません結論的なものとしては、「輪廻転生」「極楽浄土」かな。唯一神を否定しているようにも感じられます。一部、アメリカのカソリック信者がこの作品のボイコットをしていると聞きました。まあ、そんなこともありうるだろうと思う内容でした。
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P・プルマン 新潮文庫「ライラの冒険」3部作の第2部。ライラは自分が暮らしていた世界を抜け出し、違う世界に行きます。ウイルという少年に出会いますが、この少年、もともと私たちと同じ世界で暮らしていたようです。パラレルワールドにはそれぞれの世界を行き来できる窓(穴)が空いています。その穴を自由に開けることが出来る短剣を二人は手に入れます。ライラの世界で起こっている「何か」は、どうやらこの「窓」が空いていることに関係しているようです。そしてライラの持つ真理計とウイルの持つ短剣は重要な役割を果たすもののようです。「黄金の羅針盤」に登場したキャラクターの活躍の場は少なく、話が進むにつれ謎が深まり、ライラとウイル自身もどこに向かっているのか良く判らないようです。どこに向かっているのかを知りたいという興味だけで読みきった気がします。唯一神の存在を基本としていない、私を含めた多くの日本人にとって難しい話だという思いがますます強くなりました。宗教というのは人々に救いを与えるものだけど、争いをももたらすものであることにも気付かせられます。ライラの強い意志、ウイルの母親を思う気持ちが救いです。
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P・プルマン 新潮文庫お転婆な11歳の女の子ライラ。彼女はイギリス・オックスフォードなんだけど、ちょっと違うパラレルワールドに住んでいます。人々は皆一匹ずつ生き物の形をした「ダイモン」という守護精霊を連れています。親をなくしたライラは大学寮で大人たちに囲まれて暮らしています。そんな彼女が大人たちの目論見に巻き込まれ、自分自身の考えに目覚め、気付き、真実を求めるために戦う物語です誰が敵で、誰が味方かわからない。世の中で起こっていることも理解できない。どうやらこの地球に生きるものすべてに影響する根源的な問題で、宗教的なものらしい。ライラの持つ黄金の羅針盤は真実を教えてくれるのだけれど、誰でもが読めるわけではない。どうやらライラは特殊な能力を持つ選ばれし子供のようです問題はキリスト教の原罪にあるらしく、創世記のアダムとイブにまで及ぶようです。宗教的で哲学的でもある難しい話で、序盤はとても読むのが辛かったです。後半ライラに引きつけられる、魅力的なキャラクターの持ち主とともに活躍し始めると面白くなってきます。結局謎は解けないのだけれど、難しいこと考えないで楽しく読むべきなのだろうか
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高嶋哲夫 文春文庫
出張先で本屋に行ったら著者のサイン会をやっていたので、本を購入しサインしていただきました。お客さんが誰もいなくて暇そうにしていたので少し話をしました。隣のシネコンでこの後舞台挨拶があるそうです。
高嶋さんは原子力の研究者でしたが、挫折して食べて行く為に作家になっったそうです。なるほど、端的で読み易い文章です。ストーリーもなかなか良くて、本人曰く、プロットを最後まで決めないで何となく書いているそうでが、そうは思えません。違う作品で「サントリーミステリ大賞」と「読者賞」を初めて同時受賞したというのは納得です。ただ、気の利いた会話などはなくて私のお気に入りではありませんでした。
映画では登場人物の設定が少し違うようです。これまでに2回映画化の企画を断り、3回目にして満足できる話がきただけあって、高嶋さん自身、脚本には満足しているそうですが、1ヶ所だけ不満があったそうです。プロデューサーにはその話をしたのですが、はぐらかされてしまったそうです。
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矢作俊彦 ソフトバンク文庫
ハードボイルド短編集。舞台はマンハッタンで、主人公は名無しの探偵。
あとがきは関口苑生さん。矢作さんの「ハードボイルド」について書いてあるまじめな解説です。この文章を読むだけでこの本を買って良かったと思います。
江戸川乱歩も「ハードボイルド」の定義についてはよくわかっていなかったそうです。昭和29年の「別冊 宝石」に乱歩が「チャンドラーについて」を書いているのですが、アメリカでのチャンドラー評の紹介のみで、乱歩がどう思うのかは書いてありません。私も定義なんてどうでもいいほうですが、チャンドラーを「ハードボイルド」の正統だとすると、その文体を矢作さんはちゃんと継承していると思います。ただ、文体だけが「ハードボイルド」ではない様で、そのへんのもどかしさを矢作さんは感じ、この作品をパロディだなんて言っているのでしょう。とにかく、作者の「へそ曲がり度」が大きい事だけは感じられる作品たちです。このへそ曲がり度を楽しめる人が増えること願います。乱歩が書いて中に、「高級な人でなければチャンドラーに憑かれる心配はない」と紹介されています。今、日本に真に高級な人ってどれだけいるのだろう。
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矢作俊彦 ソフトバンク文庫
ハードボイルド短編集。舞台はマンハッタンで、主人公は名無しの探偵。
1980年5月~83年9月までFM東京、23:45~ 月~金ベルトの10分番組としてOAされたラジオドラマのノヴェライズ。ナレーションは日下武史さん。とてもカッコいい番組でした。この時間はちょうど「ジェットストリーム」の直前。城達也さんのナレーションも懐かしいです。FMが大人のラジオ局だったんですね。
81年にCBSソニーからⅠ、Ⅱ。85年に光文社から「凝った死体」「笑う銃口」「はやらない殺意」。5冊出版されていて、私もすべて読んでいる(はず)。今回はソフトバンク文庫が4冊にまとめて復活させたようです。
この作品、矢作さんは「悪意が仕込まれたパロディ」で、「小説」ではなく「読み物」だと言っているそうです。彼のことだから、「ハードボイルドの短編集」なんて言い方も気に入らないと思います。でも、「ハードボイルド」と呼ばれる代表的な作家のエッセンスを取り入れた、矢作さんらしい文章はとても素敵。音楽を聴くように「感じる」ための作品です。
と偉そうに書いていますが、ほとんどが「解説」の受け売り。Ⅱ以降の解説を読むのも楽しみです。
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ロス・トーマス 丸本聰明 訳 ハヤカワミステリ(ポケミス)
原題:The Cold War Swap(Spy in the Vodka) (1966)
再読です。http://mystery.spaces.live.com/blog/cns!65E19D5C6B7B47C!163.entry?fl=cat
邦訳の初版は1968年。初読の際のブログに書いていますが、数年前に加藤さんが早川書房に直接問い合わせ、手に入れた色褪せた最後の1冊をお借りして読みました。加藤さんはロス・トーマスの未訳が多く、邦訳された古い作品もなかなか手に入りにくいことを日頃から嘆き悲しんでいます。ポケミスが1800号を突破した記念に4名の作家がそれぞれ2冊選んだポケミスに、推薦文の帯を付けるというこのフェアを実施。原りょうさんが選んだ1冊がこの「冷戦交換ゲーム」。という訳で、私は真新しいのを彼の顔写真のおまけつきで手に入れることができました。
デビュー作でMWA賞受賞。主役はマック&パディロ。私が初めて読んで、ロス・トーマスにハマることになった「黄昏にマックの店で」が続編です。舞台は大戦後のドイツ。いまや壁があったなんて知らない人も多いですよね、ベルリンに。その壁のこっちとあっちで西と東の緊張みなぎる駆け引きが。やり取りされる会話が私にはたまらない作品なのですが、やはり日本人受けしないのか、これを読んだ同僚のウケは良くなかったです。
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大好きなフランシスの「競馬」シリーズを久々に堪能。昨年末の6年ぶり刊行はシド・ハレーが4回目の登場です。訳者はずっと菊池光さんだったのですが、昨年末に亡くなったので今回から北野さんです。自ら菊池さんの弟子だと仰っています。フランシス=菊池さんの文章は淡々としていて、しっかり読まないと登場人物の思いを読み取れなかったように感じていたのですが、奥様を亡くしたフランシスが変わったのか、訳者のせいなのか、この作品ではハレーの感情が素直に伝わってきたような気がします。ハレー自身も歳をとって、愛する彼女もできて、前作までとは随分ウェットになっています。元義父もお元気で、元妻との関係も改善。なんか、ハレーの次作も読めそうな雰囲気です。
このシリーズ、毎年末に出ていたので、寒い季節にヌクヌクの部屋でじっくり読むのが楽しみでしたが、今回は4月の過ごしやすい気候のなか、通勤電車で堪能しました。
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主人公は「裏の探偵」「木」。3年前、ヤクザの組長誘拐犯人の二人に、共犯者で身代金を隠したまま死んだ中国人、李の恋人Kの身辺調査を依頼される。彼女の魅力に惹かれていく木。
大沢さんらしいプロットは、とても甘いけど、好きだし、登場人物の設定も好み。でもとても物足りない。クドクドした説明が多すぎる。主人公の動きが足りない。マーロウ、スカダーの直後に読んだので不満は増大。結末が予想できるストーリー、それを主人公にウダウダ説明されるとイヤになります。木は男として甘甘で、気の利いた台詞もなし。
大沢さんの作品はすべてハードカバーで買っているので、これも躊躇しつつ、迷いに迷って、発行から随分時間が経って買ったのですが、後悔してます。
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スカダー・シリーズの2作目。一度は読んでいるはずだけど、このタイトルは記憶に無かったので、ブックオフの100円コーナーで見つけて購入。
刑事が警察内部の腐敗を告発。しかし、それがきっかけなのか、娼婦が彼を恐喝で告訴し、殺される。当然刑事が疑われ、スカダーに調査を依頼。
スカダー・シリーズの紹介はすべて「ハードボイルド」作品として紹介される。当然、チャンドラーの流れを汲む作品。「ロング・グッドバイ」「長いお別れ」の直後に読んだために、頭の中は完全に「マーロウ」モード。すぐにスカダー・モードに 切り替わったものの、二人を比較しながら読んでしまいます。自分の行動に対する、理解するに難しいこだわりが共通点でしょうか。台詞もうまい。各章の最後の文章を読むのが楽しみ。そして最後の一言。良いですね。
2作目なので、スカダーはまだ酒を飲んでいるし、エレインはチョイ役です。この後、「1ドル銀貨の遺言」「暗闇にひと突き」と続き、最高傑作といわれる「八百万の死にざま」です。禁酒してないとスカダーらしくないですね。
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初出から約半世紀。村上春樹さんの新訳となると誰もが興味を持ちます。私は清水俊二訳で少なくとも3回は読んでいるはずなのですが、読んだ端から忘れてしまうので、新鮮な気持ちで読むことができました。清水訳よりも読み易い気がして、スイスイ、でもじっくり読ませていただきました。訳者の「あとがき」から読んだので、村上さんと、清水さんの翻訳作法の違いを頭に入れながらの読書ですが、私には具体的な違いは判りません。なんとなくですが、マーロウの生きた時代が身近に感じられたような気がします。
改めて感じたこと。マーロウって本当に嫌な奴。わざわざ会話相手が怒らせてしまう、言わなくてもいいことベラベラしゃべるし。読んでいてイライラさせられるところ多数。何をこだわって生きているのかとても理解しがたい。でも、判るような気がするし、うらやましくも感じさせられる。金、家族、女、にこだわらないで生きていけるなんて、信じられない。だから「憧れる」のでしょうか。
何度読んでも新しい発見があります。ハードボイルド系の多くの作品が、チャンドラーに影響されているのは間違いありません。読み進むごとに、いろいろな作品のシーンが、この作品のここと同じではないか、と気が付いて、それもまた楽しいものです。例えば、最近読んだコノリーのボッシュなんて、根底はまったくマーロウじゃないか、なんて思ってしまうのです。
もっと詳しく書きたいけど・・・。次はすぐに清水訳を再読します。
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産経新聞に連載されていたそうです。あの「おにゃんこ」の秋元さんです。
肺ガンで余命半年と宣告されたサラリーマンのお話。主人公の年齢は私とほぼ同じ。身につまされる部分も多いのですが、カッコ良過ぎです。帯には「理想の死」「男の身勝手」と論争を生んだ、とあります。彼は一切の延命治療を拒否して、残された時間で自分の人生と関わった人たちに、「遺書」を残そうと決めた。といっても、沢山の手紙を書いたわけではありません。彼の置かれた環境が実際のサラリーマンにとっては有り得ないほどめぐまれた、というか、とにかくカッコよすぎるんです。ちょっと白けてしまいました。
私も、死ぬまでに、私に関わってくれて、今では疎遠になっている人にもう一度直接会いたいと思うことがあります。死ぬときにはそのすべての人にお礼を言いたいとも思います。
しかし、そのことを小説にするにはこんなにカッコイイ設定にしないと成り立たないのでしょうか。私の人生経験では売れる小説のネタになんかならないですね。と、言いながら私にとっては充分面白い人生だと思っています。
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ハーレムの高校に通う十六歳の少女ジェニーヴァが博物館で一人の男に襲われそうになる。単純な強姦未遂事件と思い捜査を始めたライムとサックス。何か別の動機があることに気づく。そこにジェニーヴァの先祖である解放奴隷チャールズ・シングルトンが関与していた。ライムの頭脳が、百四十年も前の証拠物件を最先端の科学捜査技術を駆使して解明する。
リンカーン・ライム シリーズの第6作だそうです。私は1冊も読んでいませんでした。あれだけ話題になった「ボーン・コレクター」も読んでいなかったのです。ボッシュ・シリーズとともに、何故か敬遠いていたようです。1月に短編集を読み、気に入ったので、会社の同僚から借りて読みました。「ありがとうございます。Tさん」
その短編集は「このミス」2位。この長編は6位でした。
どんでん返しの繰り返し。誰かが「ジェットコースター・ミステリー」と呼ぶのも納得。次の展開が待ち遠しくて、読むページが進みます。私の好きな、キャラクターの粋な台詞を楽しむ、というタイプではありませんが、ボリュームのたっぷりの御馳走をガツガツ喰らう、という感じで楽しめました。次は文庫化されている1作目「ボーン・コレクター」から順に読む気になりました。
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ハリウッド署の刑事、ボッシュ・シリーズの第2弾。
モーテルで刑事の死体が発見され、自殺と判断されるが、偽装であることが判明。捜査から外されたボッシュは密かに事件の裏を探る。他の殺人事件とも根が同一であることに気付き、新しい麻薬「ブラック・アイス」の製造工場のあるメキシコで犯罪組織のボスを追う。
面白かったです。ボッシュのキャラクターといい、何気ない台詞まで考えて書かれているようだし、ストーリーやプロットも前作よりもすっきりしているような気がします。ただ、メキシコの牧場や工場でのドンパチはセセコマシイ日本しか知らない私にはうまくイメージできないです。映画で観てみたいですね。映画化されてるのかな?
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ドーナッツ屋で働くヴィンス。カード偽造と麻薬の密売を裏稼業にしているが、まっとうな暮らしを望んでいる。そんなある日、なにものかがヴィンスの命を狙い始めた。
ヴィンスは日本ではちょっと理解できない「証人保護プログラム」によって過去を捨て、それまでは縁も所縁もなかった土地で生活している。ちょっと変わった男。ミステリマガジンの書評では、彼が毎週新しい本を買い、読み切らないうちに本屋に売り飛ばし、新しい本を買うのだが、その理由が書かれていなかった。その理由を知りたい為に買ってしまったようなもの。証人保護プログラムに保護された人間の暮らし、カード偽造や麻薬の密売の方法など、ちょっとそそられるものはあったけど物足りなさも大いに感じられた作品。
時代は1980年。カーターとレーガンが戦った大統領選挙真っ只中。思えば、アメリカが大きく舵を切った年だったような気がする。「4年前と比べて暮らしは良くなったか」と候補者の一人は作中で問いかけている。それから20年以上経った今、私達の暮らしは良くなっているのだろうか。次作は9・11を題材にした作品らしい。
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ロバート・B・パーカー 石田善彦 訳 ハヤカワ文庫
パーカー版フィリップ・マーロウ 『大いなる眠り』の続編で、1991年(日本では92年「夢を見るかもしれない」)に発表されたものの文庫化です。読んでいるはずだと思ったのですが、未読だったようです。パーカーは89年にチャンドラーの未完の遺作「プードル・スプリングス物語」を書き継ぎ完成させています。これの評判がイマイチだった。私も読んでがっかりしました。で、これは登場人物や舞台はそのままながらも、全くの新しい作品。随所のに“前作”が引用されています。出来としてはまあまあ、だと思いますが、やはりチャンドラーに敵うわけはありません。チャンドラーの訳の解らん、だけど鮮やかにイマジネーションをかきたてる、比喩だらけの文章(素晴らしい文章という意味)を踏襲しようとしているようですが、常識的な人間では無理。また、文章に説明的な意味を感じさせない、不親切なチャンドラー。パーカーはどうしても読者に親切になってしまうようです。
マーロウは、スターンウッド家の執事ノリスから失踪人捜索の依頼をうける。当主の将軍はすでに亡くなり、長女ヴィヴィアンが入院させた次女のカーメンが姿を消していた。立ちはだかるのは巨大な権力。どんな意味があってマーロウはそれに対抗するのか?
チャンドラーのマーロウよりも読み易いマーロウという感じでした。
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「このミス」海外篇2位。どんでん返しの玉手箱!と帯に書いてあるし、書評も解説も誉めまくっています。なるほど、期待しながら読んでいることもあり、どの短編も読み初めから結末がどうなるのかドキドキしながら、先に結末を読みたくさせられ、最後はお見事と手をたたきなるような16作品550Pでした。原題は「TWISTERS(捻り) 」。なるほど、これほど内容を端的に表したタイトルはないですね。
ディーヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズはなんとなく手を出すのをためらっていました。唯一の短編がこれに納められています。この長編は「このミス」6位に入っています。こちらも読んでもいいかな、と思うようになりました。
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作者の内田康夫さんはドラマ化もされている「浅見光彦」シリーズや旅情ミステリーで有名です。作家になる前はCM製作会社の経営者だったそうです。その経歴を活かしてか、この作品の主人公は広告会社勤務です。なんとなくどこの広告会社か判るようなきがします。タイトルから想像するとおり、日本古代史と現代を結びつけた、ロマンミステリー。広告会社の若い社員が、日本を代表する大企業の経営者の問題ある過去と現代の犯罪に巻き込まれます。主人公も悪者も「物質的繁栄が精神的堕落を生んでいる」という考えは共通するものの、その解決の仕方の方向が正反対なので対立することになります。
この作品が発表されたのは1984年。今から20年以上も前です。現在進行している日本の右傾化への心配が、この作品に描かれています。作者は身の程知らずに哲学や思想や理想を語ることを虚しいあがきだと後書きで書いていますが、大衆文学が世に与える影響こそが大であるとも言っています。その通りですね。正直、これも作者自らが書いていますが、作品としては素人っぽいものです。プロットは良いと思うのですが、文章や台詞はこなれていません。しかし、作者の思いは伝わってくる作品だったと思います。
正月、帰省時に父から貰って読みました。今年の1冊目。期待しないで読んだのですが、なかなか良かったです。
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2006年も残り僅かです。
これまでの私の読書人生を少しだけ振り返ってみました。オールタイム・ベストです。
とにかく、読んだ端から内容を忘れてしまうので、ここにあげた作品もよく覚えていないのですが、読んだときの衝撃を記憶している作家と作品です。他に思い出したら変わるかもしれません。順位はつけられません。
コナン・ドイル シャーロック・ホームズ 「緋色の研究」
小学生の時に病床で読み、所謂「推理小説」に興味を持ち本を読むようになりました。
ホームズに出会わなければ本好きにはならなかったでしょう。
レイモンド・チャンドラー 「プレイバック」
「しっかりしていなければ生きてゆけない。優しくなれなかったら生きている資格がない」
この台詞のかっこよさでハードボイルドに嵌りました。
カーター・ブラウン 「死体置場は花ざかり」
高校時代、父親の書斎にあったポケミスをむさぼり読む。
アル・ウィラー警部や女私立探偵メイヴィス・セドリッツなどのシリーズキャラクターが活躍する
お色気たっぷりの軽ハードボイルド。とにかく憧れた。
ギャビン・ライアル 「深夜プラス1」
とにかくかっこ良かった。シトロエンが欲しかった。ヨーロッパに行きたかった。
エド・マクベイン 「酔いどれ探偵カート・キャノン (Curt Cannon)」
87分署シリーズ「警官嫌い」を選ぶべきかもしれませんが。
ディック・フランシス 「利腕」
毎年年末に暖かい部屋で新作を読むのが楽しみでした。
最高傑作はやはりこれでしょう。
ローレンス・ブロック 「八百万の死にざま」 マッド・スカダー・シリーズ
翻訳ミステリーをむさぼり読むことになるきっかけはこれかも。
ロス・トーマス 「黄昏にマックの店で」
ベストの中のベストはこれかもしれない。今まで読んだ本の中で一番好きなタイトル。
もちろん中身も最高。
アンドリュー・ヴァクス 「フラッド」 悪役バークシリーズ
私の探し求めていたものはこれだ、なんて思ったものです。
ジェイムズ・クラムリー「酔いどれの誇り」
私にとってもっとも衝撃的な作品。
何か大切なものを忘れているような気もしますが、まあ、こんなところでしょう。
思い出したら更新します。でも、落とす作家、作品はないですね。そん時は追加か。
良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いします。
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国内版でランクインした作品のうち読んでいたのは、東野圭吾「赤い指」の1冊のみ。同僚に借りて読んだもので、正直ランクインするような作品だとは思いませんでした。大沢在昌「狼花 新宿鮫Ⅸ」はこのミス購入後に読みました。ベストテン作品のうち是非読んでみたいのは香納諒一「贄の夜会」。なんと12年ぶりの作品だそうです。佐々木譲さん、宮部みゆきさんのものも読みたいけど、国内版はほとんどがハードカバーなので腰が引けてしまいます。
海外版1位はド本命、ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」。今年はこれにつきますね。ジェイムズ・カルロス・ブレイク 「荒ぶる血」 は昨日読了。
ディーヴァー「クリスマス・プレゼント」と並んで2位の作品です。
「あなたに不利な証拠として」はダントツだったようで、2位は同着です。ディーヴァーは6位に「12番目のカード」も入っています。作家別では1位ですね。
読みたい作品は、コナリー「天使と罪の街」、ディーヴァーの2冊。海外版は文庫が多いので、手が出しやすいです。珍しく読んでいたハイアセン「幸運は誰に?」は11位でした。ペレケーノスが今年2冊出たのですが、どちらも選外。厳しいですね。
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