2016年7月16日 (土)

16018. 秩序の喪失

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『秩序の喪失』 (プロジェクトシンジケート叢書) 単行本(ソフトカバー) 2015/2/10

安倍 晋三 (), ジョージ・ソロス (), ズビグニュー・ブレジンスキー (), & 5 その他

安倍首相を知るという個人的キャンペーン第二弾。大学の図書館で著者検索したらこの本がヒットしたので読んでみました。
「われわれの未来を形づくるアイデアを詰め込んだ、国際言論機関プロジェクトシンジケートの最強オピニオン集」
だそうです。寄稿している皆さんもそれぞれの分野で実績がある素晴らしい方々のようですが、無学な私には、安倍首相とゴルバチョフさん以外は知らない人ばかりです。ざっと目を通しましたが、私には難しすぎるものばかりです。ただ、皆さんが真剣に「世界社会」のことを、彼等なりに考えているということは何となくですがわかったような気がします。
日本語版だからでしょうか、トップバッターは安倍首相。さすが、日本のリーダー、他の執筆者とは一線を画す原稿です。自らの実績とこれからの日本の進むべき方向が平易な言葉で判りやすい文章で書かれています。他の執筆者は広い視野で、現状分析から予測、そして未来への提言をされているのですが、私にとっては難しすぎてよくわからない。わかるのは、こんな立派な人たちでもこの世界の政治や経済の状況は混沌としていてもはや制御不能の状態かもしれないということ。
それに比べて安倍さんの文章は判りやすい。ご自身と日本のことしか書いてないから広い視野を持つ必要がない。以下引用。

「わが国は、戦後七十年間にわたり一度たりとも、武力を背景に他国に意思を押し付けることも威嚇をすることもなく外交を進めてきました。
 この事実があるからこそ、国際社会は日本を信用してくれているのです。そして何にもまして、日本に寄せられている世界の信頼は、この国が世界の三指に入る経済大国へと大きく変貌を遂げていくなかで無数の日本人が示してきた節度や礼儀によるものであります。
 国際社会が日本に。そして日本人に寄せる信頼が、わが国の外交にとって最も価値ある資産となっています。日本国民はわが政権に対して、この伝統を引き継ぎ、少しも損ねることなく未来に継承してくことを望んでいます。」

当たり前のわかりやすい文章ですよね。でもこれが最大の謎。
この本の発行は20152月。前年に安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行っていた。そして、15年の5月には集団的自衛権の行使を可能にする安全保障の関連法案を閣議決定し、その後国会で与党の強行採決により成立しました。
集団的自衛権の行使を宣言するということは、他国の紛争に武力をもって介入するということ。「武力を背景に他国に意思を押し付け、威嚇することで外交を行う。」と宣言したに等しいのではないでしょうか。書いてあることと実際が違い過ぎると私は思うのです。安倍さんが自ら言っている「国民が政権に望んでいること」とは、違う方向に進んでいるように思います。

参院選が終わった現在、選挙前にはほぼ発言のなかった憲法を変えるための発議をすることを安倍さんは言い出しているようです。この本に書かれていることと、現在起こっていることの、私の感じる矛盾を説明してほしいと思うのです。残念ながら今年出版されたこの本の新版『安定とその敵』に、安倍さんは寄稿していないようです。


内容紹介
この人選から未来が見える。大物投資家ソロス氏のかけ声の元、ブレジンスキー氏、ドラギ氏、ゴルバチョフ氏、ティモシェンコ氏、グーグルのシュミット会長らが旧年を総括し、この先のトレンドを物語る(あるいは自分たち計画をほのめかす)。われわれの未来を形づくるアイデアを詰め込んだ、国際言論機関プロジェクトシンジケートの最強オピニオン集。日本からは安倍晋三首相が昨年に続いて寄稿。

PROJECT SYNDICATE
とは
チェコの首都プラハに本拠を置く国際言論組織。世界の指導者・思索家が書きおろす知的刺激にみちたオピニオンを、150カ国・480余の新聞・雑誌に配信する。購読者数は7000万に達し、世界最大の言論機関といえる。政治・経済・科学・文化をになう当事者みずからが激変する現代をするどく洞察し、確かな学識にもとづく論争が公共の場でおこなわれるという、比類なき言論空間を生みだしている。日本の報道機関では朝日新聞、読売新聞、日経新聞などが加盟している。出資者には大物投資家のジョージ・ソロス氏も名を連ねる。

著者について
安倍晋三 Shinzo Abe
日本国首相(97)1954年、東京に生まれる。77年、成蹊大学法学部政治学科卒業後、79年に神戸製鋼所入社。82年に外務大臣秘書官、93年に衆議院議員初当選。内閣官房副長官、自由民主党幹事長、内閣官房長官を歴任し、2006年に第90代内閣総理大臣に就任(07年まで在任)12年に内閣総理大臣(96)再登板。1412月、三度首班指名を受け現職。

ズビグニュー・ブレジンスキー Zbigniew Brzezinski
戦略国際問題研究所(CSIS)理事、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院上席特任教授。1928年、ポーランドのワルシャワに生まれる。外交官の父のもと幼少期を戦間期のドイツ、ロシアで育つ。38年にカナダ移住。49年にカナダのマギル大学を卒業し、53年に米ハーバード大学で博士号。同年、同校教員となり、60年にコロンビア大学に移る(89年まで在任)66年から68年、民主党リンドン・ジョンソン政権で国務省政策企画本部スタッフ。68年の大統領選挙で民主党ヒューバート・ハンフリー陣営の外交政策を担当。73年、日米欧三極委員会の創設に関わり、76年まで同ディレクター。78年から81年、民主党ジミー・カーター政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官。81年、米中国交正常化および人権・安全保障政策への貢献で大統領自由勲章を受章。88年の大統領選挙で共和党ジョージ・ブッシュ(シニア)陣営の外交政策アドバイザーを務める。94年、CSISに助言して米国・ウクライナ諮問委員会を創設(米側からヘンリー・キッシンジャー氏、ジョージ・ソロス氏などが参加)2004年、外交問題評議会(CFR)で報告書「イラン:新アプローチの時」を発表。著書に『ひよわな花・日本』(72)、『アウト・オブ・コントロール』(93)、『ブレジンスキーの世界はこう動く』(97)、『孤独な帝国アメリカ』(04)、『Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power(12)など。ワシントンDC在住。

単行本(ソフトカバー): 176ページ
出版社: 土曜社 (2015/2/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4907511159
ISBN-13: 978-4907511159
発売日: 2015/2/10
商品パッケージの寸法: 19 x 12.8 x 1.6 cm

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2016年6月23日 (木)

16016.深夜プラス1

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私が20代の頃、撮影した女優さんの髪型をクライアントが気に入らず、撮り直せと言い出しました。撮影現場にはクライアント担当者が立ち会っていたので、女優さんサイドは納得しません。プロダクションの担当役員に大阪から再撮影のお願いの電話をするも、取り次いでもらえません。どうしようもなく上京し、恵比寿にあるプロダクション前の公衆電話から電話したら、その日の夜に麹町のテレビ局のロビーで会ってもらえることになりました。結局、こちらの立場を理解していただき再撮影することになり、車でホテルまで送っていただきました。車中では困っていたキャスティングの件にも相談に乗っていただき、自動車電話で連絡をとり、MCの方を紹介していただきました。その後の仕事は苦労もありながら、20代の若造を信用していただいた皆さんのおかげでこなすことができました。
忘れられない車中となった車が、シトロエンでした。この宇宙船みたいな形で、ふわふわした乗り心地の自動車が、『深夜プラス1』では重要な役割で登場しています。
大戦を引きずる時代。それぞれの車が個性を主張していた中でも、シトロエンは特異な車でした。
『深夜プラス1』の原著は1965年の作品。菊池光さんによる邦訳は1967年の発行。文庫版は1976年に発刊されていて、今回読んだのは発行されたばかりの鈴木恵さんによる新訳です。
私は文庫版で学生時代に読み、再読もしました。冒険小説の名作だと思います。

今回、新訳での久々の再読となりました。読んだ端から忘れてしまうという私の読書なので、新旧の比較なんてできませんが、今回も堪能させていただきました。フランスからリヒテンシュタインまで人を運ぶ、というお話ですが、インターネットも携帯電話もない時代だからこそ成り立つストーリーです。
現代では何でもがユーザーフレンドリーになり過ぎている。道具に対するこだわりがなくても誰でも同じようなことができる。でも、これは同じようなことしかできないということ。物にこだわりを持ち工夫することでプロフェッショナルな仕事ができる。この作品では、車がシトロエンのDSである理由があるけど、今ではどんな車でも同じようもの。性能の差も無きに等しいし、形も似たり寄ったり。これでは物語の主役級にはなりえない。
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システムとか、防犯カメラとかが溢れている現代よりも逃げやすいかもしれないけど、逃げる側の情報収集も難しい。結局は如何に信用できる友人がいるかどうかにかかっている。信用するか否かの基準は「正義」の有無。「正義」が「金」の力を上回ったときに「友情」が成り立つのかもしれません。
対して「愛情」は、お互いの弱さを愛おしく思い、それを補おうとする感情かもしれない。だから、「損得」を考えると「愛情」は成立しない。
初めて読んだ時にはこの作品は大人に憧れる私にとってのファッションだったかもしれません。二度目は楽しんで読めたのでしょう。そして、この歳になって再読し本当の良さをやっと判ったのかもしれません。大人になったってことかな。

作品の冒頭、フランス語であろう会話の部分を読んでいると本当にフランス語の会話が聞こえてきました。あまりの作品の素晴らしさに、私の頭がどうかしてしまったのかと思いましたが、目を上げると留学生らしい学生がフランス語で会話しながら目の前を通り過ぎて行くところでした。
プロット、キャラクター、会話、蘊蓄、こだわり。良質のミステリとしての条件はすべて満たされ、戦争の余韻のある時代に、大げさだけど人生について考えさせてくれる、間違いなく名作です。
内藤陳さんは、「読まずに死ねるか」って言ったけど、死ぬまでにまた読みたい物語です。

『深夜プラス1』〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV) 文庫 2016/4/22
ギャビン・ライアル (), 鈴木 (翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
腕利きドライバーのケインが受けた仕事は、ごくシンプルな依頼だった。大西洋岸からフランスとスイスを車で縦断し、一人の男をリヒテンシュタインまで送り届けるのだ。だが行く手には、男を追うフランス警察、そして謎の敵が放った名うてのガンマンたちが立ちはだかる。次々と迫る困難を切り抜けて、タイムリミットまでに目的地へ到着できるか?プロフェッショナルたちの意地と矜持を描いた名作冒険小説が最新訳で登場。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
ライアル,ギャビン
1932
年英国バーミンガム生まれ。1951年から53年までは英国空軍に従軍。退役後、ケンブリッジ大学で英語学の学位を取得し、以後ジャーナリストとして活動した。1961年に『ちがった空』で作家デビュー。『もっとも危険なゲーム』(1963)、『深夜プラス1(1965)など冒険小説の傑作を次々と発表。1996年には英国推理作家協会の会長をつとめる。2003年死去

鈴木/
早稲田大学第一文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

文庫: 425ページ
出版社: 早川書房; 新訳版 (2016/4/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150413835
ISBN-13: 978-4150413835
発売日: 2016/4/22
商品パッケージの寸法: 15.9 x 10.7 x 1.8 cm


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2016年6月 4日 (土)

16015.過ぎ去りし世界

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『過ぎ去りし世界』 (ハヤカワ・ミステリ1906) 新書 2016/4/7
デニス・ルヘイン (), 加賀山 卓朗 (翻訳)

最近、沢山人が死ぬ話を読むのが辛いのですよ。どれだけ悪人であろうとも簡単に殺してはいけないのではないか。名もない脇役でも人の子だよ。とか、思ってしまうのです。
アメリカのギャングの話なのでガンガン人が殺されます。ルヘインは大好きな作家です。この最新作を読むのは楽しみでした。でもね、序盤ちょっと読むのが辛い。悲しい不条理な話になりそうだったから。
ジョー・コグリンは表向き町の有力者であるビジネスマン。愛する妻はなくしたけど、一人息子は良い感じで育ってくれています。このまま穏やかな人生を送ってほしいと思うのですが、所詮ギャングの成り上がり。生死の瀬戸際にいることからは抜け出せない。殺されることが決まると逃げ出せない。逃げ出すには殺すしかない。死ぬ覚悟で生きるしかない。一生安らぎを得られない世界の生きる目的って何なのでしょうね。
老成した雰囲気を持つジョー。思わずメモしておこうかと思うようなセリフを吐いたりするのですよ(しなかったけど)。すっかり達観している様子で、私と同世代なったのかと勘違いするも、実際はまだ30代後半。人生半ば。このシリーズは一応完結したようですが、またジョーに会うことはできるのでしょうか。
いつのまにか「巨匠」になってしまったルヘインです。流石に上手ですね。早く読み進みたいと思いながらも、じっくり読ませてくれます。堪能させていただきました。

内容(「BOOK」データベースより)

第二次世界大戦下のフロリダ州タンパ。抗争のさなかで愛する妻を失って以来、元ボスのジョー・コグリンは、表向きはギャング稼業から足を洗い、一人息子を育ててきた。だが、そんな彼を狙う暗殺計画の情報がもたらされる。いったい誰が、何の目的で?組織を託した旧友のディオンや、子飼いのリコらが探っても、その真偽すらつかめない。時を同じくして新たな抗争が勃発し、平和を保ってきたタンパの町は揺れ動く…変わりゆく社会の裏で必死に生き残ろうと足掻く男たちの熾烈な攻防を力強く描く、巨匠の最新作。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
ルヘイン,デニス
アメリカ、マサチューセッツ州生まれ。1994年のデビュー作でシェイマス賞最優秀新人賞を受賞。2013年には『夜に生きる』でエドガー賞最優秀長篇賞を受賞

加賀山/卓朗
1962
年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2016年6月 2日 (木)

16017.美しい国へ

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『美しい国へ』 (文春新書) 新書 2006/7

安倍 晋三 ()

安倍首相の発言は酷いものばかりだと思います。最近では自身のことを「立法府の長」とまで言ってしまいました。「もしかしたら言い間違いかもしれない」ではすまない話だと思います。
私はこの人のことはもともと信用していないので今更とやかく言いたくないのですが、信じられないほど高い支持率なので、もしかしたら私のこの人に対する認識が間違っているかもしれないとも思ってしまいます。唯一ともいえるこの人の著作は読んでおくべきだと思い図書館で借りてきました。読みたくなかったのだけど。

昨年5月、安倍さんは国会の党首討論で共産党の志位さんのポツダム宣言についての質問に「私もまだ(ポツダム宣言の)その部分を詳らかに読んでいるわけではないので承知はしておりませんが…」と答えました。私は「戦後レジームからの脱却」が安倍さんの政治理念の根幹をなすものだと思っていました。それがポツダム宣言を「承知してない」というのはあまりにも無責任です。
安倍さんは過去の事実などは重要とは思わず、自身の理想のみを追求する人だと思っていました。しかし、この本には歴史的事柄や政治家の言動や他国の政治についてなどの引用多数。結局安倍さんの考える(思うではなくて)「美しい国」とは何かは、私にはよくわかりませんでした。
突っ込みどころは沢山あるのですが、ここだけは私が受け入れられないというところは戦争で亡くなった方に対する思い。靖国神社に祀られる英霊の皆さまは「国のために戦い、命を落とした」ことになっていますが、私は、「国のためだと騙され戦地に送られ殺された」と思っています。だから、皆様には「国のために戦ってくれてありがとう」ではなく、「私たちの為に大切な命を無駄に奪われてしまい申し訳ありませんでした」と思うべきだと私は考えるのです。誓うべきは、「二度と無駄に人を殺すような戦争はしません」であり、「日本は強い国になります」ではないと思います。安倍さんや靖国神社には、亡くなられた方への「贖罪」の気持ちが感じられないのです。まるで「今度はうまいことやるからいつでも命投げ出す用意しておけよ」と言われているように感じるのです。
国のあり方については人それぞれの考え方があると思います。私は「人があっての国」だと思います。「国あっての人」だとは思いません。国がなくても人は存在できるけど、人がいないと国は存在することができません。人に死を強要する国は国として認められません。
戦後70年間。日本は人に自国のための死を強要しませんでした。このことに日本は自信を持ち、世界に誇るべきです。
普段読んでいるミステリのように楽しい本ではなかったので、詳らかに読んだとは言えませんが、安倍さんを支持する理由は全く見つけられませんでした。残念な時間の使い方だったかもしれません。

内容(「BOOK」データベースより)
自信と誇りのもてる日本へ。「日本」という国のかたちが変わろうとしている。保守の姿、対米外交、アジア諸国との関係、社会保障の将来、教育の再生、真のナショナリズムのあり方…その指針を明示する必読の書。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
安倍/晋三
内閣官房長官。1954年、東京生まれ。成蹊大学法学部卒業。神戸製鋼所勤務を経て、82年に父・安倍晋太郎外務大臣の秘書官に。93年、衆議院議員に初当選。内閣官房副長官、自由民主党幹事長、同代理などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

新書: 232ページ
出版社: 文藝春秋 (2006/07)
言語: 日本語
ISBN-10: 4166605240
ISBN-13: 978-4166605248
発売日: 2006/07
商品パッケージの寸法: 17.2 x 11 x 1.4 cm

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2016年5月27日 (金)

16014.夏に凍える舟

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『夏に凍える舟』 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 新書 2016/3/9

ヨハン テオリン (), Johan Theorin (), 三角 和代 (翻訳)

田舎道をドライブすると、しみじみ日本はきれいな国だと思います。高速道路以外の道路も整備されていて走りやすく、景色を楽しみ季節を感じることができます。
都会でしかできない仕事(と思っていた)をし、必要なすべてを金で買って生活することしか知らなかった私には、田舎での生活を想像できませんでした。仕事を辞めることを決めた後に、田舎に暮らす友人を訪ね、その暮らしぶりを聞いて、人間は食べるものと住むところがあれば生活ができるという当たり前のことに気が付いた私は、益々田舎の風景が美しく見え、気持ちよく感じるようになりました。自然とうまく折り合いをつけられるように作られた景色は良いですね。

エーランド島シリーズもついに最終回。3月に出たこの本を読むために読んだ前3作。幸せな時間でした。すっかりエーランド島に嵌ってしまいました。
自然と折り合いをつけながらの島の暮らし。濃密な人間関係。自然と人間が作り出す伝説と事件。陰鬱で救いのない物語という部分もあるのですが、なにか田舎の友人を訪ねて話を聞いているような気持ちの良い時間を過ごせたような気がします。

エーランド島の夏は賑やかです。前作までとは違い現代的なサスペンス・ミステリの様相です。今回語られるサイドストーリーは前作までに語られた伝説的なものではなく、イデオロギーの対立という世界的な情勢に翻弄された残酷な人生。その人生と利益至上主義の現代経済の実践者が交わって織りなす物語です。
イェルロフ爺さん全編探偵役として大活躍。もう会えないかもしれないと思うと寂しい気もしますが、老体に鞭打ちこれだけ頑張ったのだからゆっくり過ごして欲しいと思います。

内容(「BOOK」データベースより)
エーランド島に美しい夏がやってきた。島でリゾートを経営する富裕なクロス一族の末っ子ヨーナスは、海辺で過ごす二年ぶりの夏に心躍らせていた。しかしある夜、ボートでひとり海にこぎだした彼の目の前に、幽霊船が現われる。やっとのことで陸に戻ったヨーナスは、元船長イェルロフのボートハウスの扉をたたく。少年から話を聞いたイェルロフは、不吉な予感を覚える…。一方その少し前、復讐を誓うある男が島に帰りついていた。記憶と思いを丹念に描き上げた、エーランド島四部作をしめくくる傑作ミステリ!

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
テオリン,ヨハン
1963
年スウェーデン、ヨーテボリ生まれの作家。2007年に『黄昏に眠る秋』でデビュー。長篇第二作『冬の灯台が語るとき』で「ガラスの鍵」賞など三冠に輝く

三角/和代
1965
年福岡県生、西南学院大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2016年5月19日 (木)

16013.あなたが世界のためにできるたったひとつのこと

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『あなたが世界のためにできる たったひとつのこと―<効果的な利他主義>のすすめ』
単行本 2015/12/19
ピーター・シンガー (), 美和 (翻訳)

津田大介さんのメルマガの「本を読まない津田に成り代わってブックレビュー」のコーナーで速水健朗さんが紹介していました。大学の図書館に蔵書があったので読んでみることにしました。速水さんのレビューによると、著者のシンガーは「度を越した左翼」だそうです。レビューではシンガーの左翼論について速水さんがかなり詳しく紹介してくれています。私は、左右の定義なんてよくわかっていなかったのだけど、とくに最近は益々判らなくなっています。日本では「左翼」であろう共産党の主張が、とてもマトモのような気がします。「ヒダリ」は今や差別用語。「ヒダリ」に対する批判は論理的でなく根拠がなく偏っているものばかりです。そのへんのややこしいイデオロギー的対立、もしそんなものがまだ存在するとしたら、を理解する一助になるかもしれないと思ってこの本を読むことにしたのです。
ところが、目論見は外れてしまいました。
この本は「効果的利他主義」について書かれた本です。「利他主義」は、「利己主義」の反意語のようです。恥ずかしながら知りませんでした。自分のことしか考えない「利己主義」に対して、他人の為に何ができるのかを考え実行するのが「利他主義」。
自分のすべてを擲って世の為に尽くすのではなく、自身の幸せは確保しながら、余事を他人の為に提供するのが、「利他主義」のようです。提供するものが金銭であれば、それは「寄付」と呼ばれます。労働力、時間、であればボランティア活動でしょうか。臓器を提供することも考えられます。
宗教とか、特定の考え方や活動に囚われていることが前提にあるのではなく、純粋に他人の為に何ができるのかを考えるのだから、何をするのが他人のために「効果的」であるか、つまり効率が重要な要素になります。博愛主義とも違い、自分を犠牲にしてまでも他人の為に尽くすのではなく、自身の幸せを完全に確保した上に、他人の為に何ができるのかを考えます。
右翼的思想が、国家の為に自らを犠牲にしてまでも尽くすことだとすれば、個人の幸せが基本で、そのうえで他人の為に何ができるのかを考えるという利他主義は対極にあり、左翼的思想だと言えます。個人の力、主に資力で何ができるのかを効率的に考えるのは、配分の効率と公正さが最も重要になります。本来ならこの役目は政治が担うべきもの、いや、政治は公正な配分をするためにあるべきものです。そして、配分の公正さを測る尺度として貨幣システムがあるはずです。だとすれば、人間が幸せに生きるために必要なことの総量と、流通する貨幣の総量は同じになるべきで、予算、つまりお金がないから、福祉的事業ができないというのは、経済の本質として本末転倒であると思います。私は、為政者の最大の仕事は貨幣価値の適正化だと考えます。
話が脱線気味かもしれません。
この本は、「利他主義」の素晴らしさを説き、「利他主義」を絶対無二の思想として世に強制や洗脳するために書かれたものではないようです。当たり前の「倫理観」を持つ人にとって、個人が世の中の為にできることを考えるための参考書のひとつです。「押しつけ」や「あるべき論」は感じられませんでした。「利他主義」の正当性や必要性について「利他主義」の「教科書」は他に適切なものがあるかもしれません。
私には、沢山の寄付をするほどの余裕はありません。だから、どこに寄付をするのが効率的かを考える必要はないかもしれません。しかし、日頃のお金の使い方についてはよく考えたいと思っています。社会、他人の為に働いた対価として適正な額の金銭を貰い、私に提供される商品やサービスについては、それに関わった人に適当な配分がされるものにお金を使いたいのです。簡単に言うとブラック企業に金を払いたくないということかな。もう少し踏み込むと、フェアトレードの商品を買うとか。商品の対価が適正かどうかを日頃から考えることが、利他主義者としての第一歩ではないでしょうか。
少しでも寄付をする余裕のある人が読んでみるべき本ではないでしょうか。


内容紹介
シリコンバレーも注目する、
21
世紀の倫理的ライフスタイル

あの時、あなたはどこに寄付をしましたか? そのお金が何に使われたかご存知ですか? あなたのおかげで、何人の命が助かりましたか?──。世界をより良い方向に一歩進めようとする、シリコンバレーや欧米の若者たちに注目される「効果的な利他主義」を、その理論的支柱でありムーブメントを牽引する世界的な哲学者が平易に紹介する。理性と共感とテクノロジーを駆使して、効果的に「もっとも多くの命を救う」、21世紀の新しい生き方を始めるための一冊。

[
内容]
はじめに
Part1
効果的な利他主義のすすめ
1 効果的な利他主義とは?
2 ムーブメントが起きている
Part2
〈いちばんたくさんのいいこと〉をする
3 質素に暮らす
4 お金を稼いで世界を変える
5 そのほかの倫理的なキャリア
6 身体の一部を提供する
Part3
彼らを動かしているもの
7 愛がすべて?
8 理性の力
9 利他主義と幸福
Part4
チャリティを選ぶ
10 国内、それとも海外?
11 いちばん大きなインパクトを与える
12 比較が難しいもの
13 動物を救い、自然を守る
14 いちばん効果のあるチャリティ
15 人類の滅亡を防ぐ

単行本: 256ページ
出版社: NHK出版 (2015/12/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 4140816929
ISBN-13: 978-4140816929
発売日: 2015/12/19
商品パッケージの寸法: 19 x 13.4 x 2.6 cm

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2016年5月15日 (日)

16012.赤く微笑む春

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『赤く微笑む春』 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 単行本  2013/4/10
ヨハン・テオリン (), Johan Theorin (), 三角 和代 (翻訳)

エーランド島シリーズ第3弾。待ちに待った春。島は雪が融け湖となり、花が咲き始めます。心がウキウキとしてくる季節のはずですが、登場人物の皆さんはいろいろと問題を抱えていらっしゃるようで、明るく楽しい時間を過ごしているとは言えないようです。ただ、イェルロフ爺さんは暖かくなって身体の調子が少しは良いのか、老人施設を出て一人暮らしに戻ります。
前作までと同じく、過去と現在が複数の視点で展開します。今回は島での生活と濃密な人間関係が描かれています。伝承や伝説というのは信じた人がいたから語り継がれ、何らかの幸せをもたらせてくれたから今に残っているのだと思います。そんな伝説を信じた少女の生活が語られます。
前作までとちょっと違うのは、現代ミステリらしい要素が強くなったこと。世相を映した派手な事件でスリリングな展開。イェルロフ爺さんは主役ではないけれど、見事な観察力で事件解決の糸口を掴み、的確な状況判断で重要な役割を果たします。
家族の困難に立ち向かう主人公ペールの現実と、大きな年の差がありながらほのかな友情を感じさせるイェルロフ爺さんとの関係。島の伝説。事件とこれらの物語のバランスが見事。三作目も気が付けば終盤、そして一気読みと、大いに堪能させていただきました。
大学の図書館には蔵書がなかったので、市の図書館で借りました。この本のおかげでどこにも出掛けなかったGWも楽しく過ごすことができました。

内容(「BOOK」データベースより)
エーランド島の石切場のそばのコテージに暮らしはじめたペール・メルネル。ある日彼のもとに、疎遠にしていた派手で傲慢な父ジェリーから、迎えに来るよう求める電話が入る。渋々父の別荘に赴くと、そこに待っていたのは謎の刺し傷を負った父だった。そして直後に別荘は全焼する。なぜこんな事件が起きたのか?娘の病気などの悩みを抱えながらも、ペールは父の暗い過去を探りはじめる―。エルフとトロールの伝説が息づく島で、人々の切ない記憶と過去が交錯する。北欧の注目作家が贈る深い余韻が残るミステリ。

単行本: 464ページ
出版社: 早川書房 (2013/4/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150018707
ISBN-13: 978-4150018702
発売日: 2013/4/10
商品パッケージの寸法: 18.4 x 10.6 x 2.6 cm

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2016年5月 4日 (水)

16011.冬の灯台が語るとき

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『冬の灯台が語るとき』 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 単行本 2012/2/9 

ヨハン テオリン (), 三角 和代 (翻訳)

テオリンのエーランド島4部作2作目。舞台は冬。大学図書館で借りました。前作に引き続き、島の伝承と人間関係、自然が描かれています。
主人公は冬の厳しさのようです。気候が良い都会に暮らす私が、北の国の冬の嵐の厳しさを想像するのは難しいけれど、充分に感じさせてもらいました。最近、都会派ミステリよりも田舎を描いた作品が楽しく読めます。どこか憧れのある田舎暮らし。でも厳しい気候や不自由な暮らしにはすぐに逃げ出したくなるに違いありません。命に係る厳しい自然の中で暮らすと、自然の美しさを感じること、そんな自然からもたらされる生きる糧を得ることが人間本来の喜びだということを思い起こさせてくれます。実際に体験できそうでできないことを安全な場所にいながら想像するのは楽しいです。

舞台はウナギ岬の灯台。灯台守たちが暮らしてきた屋敷に若い夫婦が住みはじめます。この灯台をめぐる過去の物語。多くは厳しい自然との闘いによる不幸と、若い一家を襲う不幸が並行して語られます。
探偵役のイェルロフ爺さんは、今回出番は少ないものの重要な役割を果たします。前作同様に、事件の解決よりも島の自然に浸りながら読み進むと、いつの間にか終盤。残るページでどうやって話を収めるのだろうと思うも、見事なエンディング。このシリーズの性格が確定した作品でした。前作も良かったけど、さらに堪能させてもらいました。

内容(「BOOK」データベースより)

エーランド島に移住し、双子の灯台を望む屋敷に住みはじめたヨアキムとその家族。しかし間もなく、一家に不幸が訪れる。悲嘆に沈む彼に、屋敷に起きる異変が追い打ちをかける。無人の部屋で聞こえるささやき。子供が呼びかける影。何者かの気配がする納屋…そして死者が現世に戻ってくると言われるクリスマス、猛吹雪で孤立した屋敷を歓迎されざる客たちが訪れる―。スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝く傑作ミステリ。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
テオリン,ヨハン
1963
年スウェーデン、ヨーテボリ生まれのジャーナリスト、作家。2007年のデビュー作『黄昏に眠る秋』(ハヤカワ。ミステリ)はスウェーデン推理作家アカデミー賞、英国推理作家協会賞を受賞し、世界20カ国以上で刊行された。『冬の灯台が語るとき』でも「ガラスの鍵」賞等を受賞

三角/和代
1965
年福岡県生、西南学院大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報
単行本: 462ページ
出版社: 早川書房 (2012/2/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150018561
ISBN-13: 978-4150018566
発売日: 2012/2/9
商品パッケージの寸法: 18.2 x 11.4 x 2.6 cm

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2016年5月 3日 (火)

16010.黄昏に眠る秋

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『黄昏に眠る秋』 Kindle版–

ヨハン テオリン (), 三角 和代 (翻訳)

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月発行のポケミスはテオリンの『夏に凍える舟』。エーランド島シリーズ4作目完結編ということで、1冊目から読もうと思いKindle版で。
テオリンはスウェーデンの作家、エーランド島はスウェーデン本土に寄り添うように位置するバルト海にある細長い島。現在は本土とは橋で繋がっています。このシリーズは、この島の歴史と現在を繋ぐ物語です。
霧に包まれたエーランド島で、幼い少年が行方不明になったのは二十数年前。この事件がストーリーの中心なのですが、物語はそれ以前から語られます。どうやらこの作品の本筋は、この島の自然とそこに暮らす濃密な人間関係を持つ住民たちの物語。ミステリの形を持つ洗練された民話とも言えます。
物語は過去と現代を行きつ戻りつしながら、事件の進捗も気にしつつ、エーランド島の自然と暮らしに浸っているうちに、気が付けば終盤に差し掛かっていました。
探偵役は元船長の老人。事件解決の為に積極的に動き回る体力はありません。田舎なので車以外の移動も不自由です。優れた洞察力と人間関係により事件の真相に迫ります。終盤の盛り上がりはお見事。もっと読みたいと思いつつ、心地よい読後感をいただきました。

内容(「BOOK」データベースより)

霧に包まれたエーランド島で、幼い少年が行方不明になった。それから二十数年後の秋、少年が事件当時に履いていた靴が、祖父の元船長イェルロフのもとに突然送られてくる。イェルロフは、自責の念を抱いて生きてきた次女で少年の母のユリアとともに、ふたたび孫を探しはじめる。長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた二人を待つ真実とは?スウェーデン推理作家アカデミー賞、英国推理作家協会賞受賞の傑作ミステリ。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)

テオリン,ヨハン

1963年にスウェーデン、ヨーテボリに生まれる。ジャーナリストとして活動するかたわら、2007年に「エーランド島四部作」第一巻となる『黄昏に眠る秋』で長篇デビュー。同書でスウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞および英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞を受賞。2008年に発表した同第二巻となる長篇第二作『冬の灯台が語るとき』(以上早川書房刊)で、スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長篇賞、CWA賞インターナショナル・ダガー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝く

 

三角/和代

1965年福岡県生、西南学院大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報
フォーマット: Kindle
ファイルサイズ: 657 KB
紙の本の長さ: 396 ページ
出版社: 早川書房 (2013/3/10)
販売: Amazon Services International, Inc.
言語: 日本語
ASIN: B00CL67PEK







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2016年4月20日 (水)

16009.メディアと自民党

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『メディアと自民党』
(角川新書) 新書 2015/10/24
西田 亮介  ()

怒涛のポケミス5冊完読の後は、未読が溜まっている津田さんのメルマガで紹介されていたこの本を図書館で借りて読むことにしました。最近のメディアのだらしなさ。最もその情けなさは今に始まったことじゃ無い気がするけど、安倍政権、自民党の圧力が強いのは事実のようで、メディア、特にテレビの情けなさが際立ってしまっているのでしょうね。30年以上メディアと付き合いのある仕事をしたけど、本当に信頼できると思えた人はほんの一握り。気骨を感じた人は数人。ほとんどはテレビ界の常識、世間では非常識に腹を立てながら仕事をしていました。テレビ局の営業担当の話題と言えば、女、酒、ゴルフ。私はどれも苦手。一緒に仕事するのは辛いですね。
 第一次安倍内閣後、野党時代の自民党の民主党に対するネガティブキャンペーンは酷かった。当時私が担当していたクライアントの担当の方が、あんな酷いこと本当に電通がやっているのか?と聞かれたことを思い出します。自民党の本質なんて相手を貶めることをよしとする、そんなもんかもしれません。それにしても酷すぎるネガティブキャンペーンがなぜ実施されたのかを知りたかったのですが、この本ではそのことはほとんど触れられていません。この酷い時期を除く前後、そして現在でも、自民党の広報戦略の重要な担い手は世耕さんであることは確かのようです。近畿大学の広報戦略も見事なものがありますよね。
広報戦略っていっても、特別なことをしているとは思えません。広報は広告と違って伝えるべきことをきちんと伝えることが全てです。表現方法に拘りすぎると本質とは違うものになってしまいます。この本の中で、自民党の広報戦略がうまくいっているとされている時期、それは広報のコンサルが入っている時期のようですが、当たり前のことをきちんとやっていたのだと思います。これはとても難しいことなのですが、うまく行き始めると簡単なことのように勘違いされて、コンサルは疎んじられ極端な成果だけを求められてしまい、悪い方向に進みます。自民党議員の「失言」の多さは広報的には最悪の状況です。彼等にとっての「失言」であって、私達からすれば、驕った政治家の「本音」です。発言の酷さに腹が立ちますが、冷静に「本音」を捉えて政治家を選別していくべきです。彼らに謝らせるのでなく、落選させればいいのです。
 広報戦略は、自らの主義主張を正しく伝え共感を得るためのものであってほしいと思っています。「嘘も方便」は許されないし、恐喝、恫喝を用いたメディアコントロールは広報ではありません。良心的学者の皆様方には、メディアが政治家よりも国民、市民の側に確固として立ち、国民、市民にはメディアの発信する情報を正しく判断できるリテラシーを醸成できる方法を追求していただきたいと希望します。

 この本の作者が本当に言いたいことは冒頭の20ページ、「はじめに」に書かれていることがすべてのようです。が、本当の本音については書ききれていないような気がします。まだ何か抑制、自己規制しているように感じられます。その項の最後は、「現代日本のメディアと政治をめぐって生じている、ときにはスリリングで、ときには惰性的で辟易とするような状況を読者が理解する一助となれば嬉しい。」と結んでいます。私にとっては、この状況を理解する一助となったとしても、この現状の救いのなさについて、焦燥感を超えた無力感に腹が立つばかりであります。


内容紹介
小選挙区制、郵政選挙以降の党内改革、ネットの普及が、メディアに対する自民党優位の状況を生み出した。「慣れ親しみの時代」から「隷従の時代」への変化を、注目の情報社会学者が端的に炙り出す。田原総一朗推薦。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)
西田/亮介
東京工業大学大学マネジメントセンター准教授。博士(政策・メディア)1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。()中小機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学特別招聘准教授などを経て現職。専門は情報社会論と公共政策(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報
新書: 255ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2015/10/24)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041027470
ISBN-13: 978-4041027479
発売日: 2015/10/24
商品パッケージの寸法: 17.2 x 10.8 x 2 cm

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