2009年9月23日 (水)

09021. ワーキングプアの反撃

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雨宮 処凛/福島みずほ  七つ森書館

ゴスロリ・ファッションで元右翼、ロックバンドのボーカル、作家で、貧困問題に取組む雨宮処凛。
衆院選での露出で、ほぼ「惚れる」近い状態になってしまった御存知、社民党党首の福島みずほ。
この、気になる二人。著作には触れたことがなかったので、二人同時に体験できる対談を読むことにしました。

対談が行われたのは2007年。当時は安部政権。完全に国民無視の右傾化?国家主義化が進んでいた時代です。「個人」が疎んじられ、「自己責任」を理由に責任を取らない人々に切り捨てられ、人間としての尊厳させも亡くさざるをえなかった人が世に溢れている現状を話しています。ヒステリックにならず、冷静に、でも情熱を持って、客観的に、でもその人の立場に立って、問題提議しています。彼女たちの話している内容は自民党政権下ではまったく改善されず、2008年秋の「リーマン・ショック」と麻生政権の無策で、最悪のものとなってしまいました。これ以上に無い最悪の状況になって初めて、その反動が今年夏の衆院選での民主党への政権交代に結びついたのでしょう。

「生き辛いのも、貧乏なのも、決してあなたのせいではない」という、二人の発言はごくごく真っ当なものだと私は思います。多くの人々が、正体不明の国体やら、企業やら社会とかいうものに怯え、自分だけがそこからはみ出ないようにとギスギスし、多くの若者は最初からはみ出てしまっているのです。彼らの責任以外の原因で。
鳩山新政権はどこまでやってくれるでしょう。当然のことながら、この対談が行われた時点で、福島さんは、大臣になるなんて思ってもいなかったに違いありません。これからが正念場です。問題提議と理想論でなく、現実の解決策を提示するだけでもなく、実行しなくてはいけないのです。今となって二人がどう思っているのか、対談をもう一度読みたいと思います。数年後でも、二人が苦労話として笑いながら、こんな話もしましたね、と楽しい対談が聞けたら良いな、と希望します。

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2009年9月16日 (水)

09020.ローマ人の物語  最後の努力 上・中・下

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塩野 七生  新潮文庫

サブタイトルのとおり、ローマがローマであるための最後のあがきの時代。紀元293年、北方蛮族と東のペルシアの侵入に対処し、ローマ帝国を東西に分け、それぞれに正、副帝を置く「四頭政」としたディオクレティアヌス帝。侵入を防ぐことには成功したが、増税や官僚機構肥大など統治のシステムはボロボロ。彼が退いた後は皇帝が乱立する内戦状態。紀元324年、最後に勝ち残ったのはコンスタンティヌス。新都コンスタンティノポリス建設、キリスト教振興、他、彼はローマを完全に別の形に変えてしまった。

塩野さんによると致命的なのは、一神教であるキリスト教の公認。多神教国家であるローマはそれゆえ属州の信教については寛容であったのだけれど、一神教であるキリスト教を公認だけでなく振興してしまうと、旧来の安全保障の概念も崩れてしまう。内外ともに良きローマ帝国は失われ、首都がローマでなくなったのだから、これはもうローマ帝国ではない。ここから中世という、ヨーロッパではキリスト教中心の歴史になっていくのですね。

外的の侵入にかまけた、軍人の台頭、増税、官僚の肥大化、専制化など、最近でもどっかで聞いたことある話ですよね。しばらくの間、ローマはとても上手く機能していて、平和を謳歌していたのですが、その歴史の後退ともいえる厳しい変化を体験することになります。歴史は繰り返されるっていうか、人間って本質的には全然進化していないのかもしれないと2000年後の今、思ってしまいます。

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2009年9月11日 (金)

09019.犬の力(上・下)

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ドン・ウィンズロウ  東江 一紀  訳 角川文庫

あのストリート・キッズのウィンズロウの最新超大作。ストリート・キッズ・シリーズは回を重ねる毎に分厚くなったけど、これは一気に上下刊。読む前に圧倒されます。

メキシコからアメリカへの麻薬流入を阻止ることに命をかけるDEAのエージェント、麻薬カルテルのボス、ドラッグの密売人、コールガール、殺し屋、司祭ら、それぞれの人生を描いた物語。それぞれが全く別の人生を歩んでいるようだが、麻薬、女、武器、などイリーガルなビジネスに係っていく中で交差していく。大義や金のためには人の命を何とも思わない裏社会のなかで、過酷な人生を送る。

バンバン人が死にます。とても残酷で前半は読むのがとてもしんどかった。登場人物それぞれの関わりが明らかになってくる頃から、一気に読まされました。彼の作品はどうしてもストリートキッズが基本になってしまいますが、その魅力であるユーモアとかウィットとかいうのは、犬の力には見当たりません。ただひたすら、麻薬に絡む悲惨さを多視点で描き、救いのなさを見せ付けられます。この作品の舞台となった時代と場所に生まれなくて良かった、と心底思わされました。

堪能。でもやっぱりウィンズロウは「ストリートキッズ」です。

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2009年9月 3日 (木)

09018.暗殺のジャムセッション

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ロス・トーマス  真崎義博 訳  ハヤカワ書房(ポケミス)

大好きなロス・トーマス作品の中でも大好きな「マッコークル&パディロ」シリーズ2作目。原作「 Cast a Yellow Shadow」が出版されたのは1967年。40年経っての邦訳です。前作の「冷戦交換ゲーム(The Cold War Swap)」は1966年の作品でポケミスでの邦訳出版は1968年。3作目の『クラシックな殺し屋たち(The Backup Men)』 は1976年。真ん中が抜けている飢餓状態が30数年も続いていたわけです。私はもちろんリアルタイムで読んでいるはずもなく、出会いは1992年の『黄昏にマックの店で(Twilight at Mac's Place)』。『冷戦交換ゲーム』以降は「立風書房」から数冊出ているのですが、ほぼ絶版。1989年以降早川書房から出版されたものはすべて読み、絶版ものと未訳ものを読みたくてしょうがありませんでした。最近『冷戦交換ゲーム』はポケミスで再版。これからも再版、邦訳があればうれしいです。

いうまでもなく、激しく堪能。今更、感想とか書く気になれず。

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2009年8月19日 (水)

09017.大阪不案内

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森まゆみ 著  太田順一写真

これは、実家で父親から貰って読みました。作者は東京下町のミニコミ誌の編集人だそうです。そんな人の書いた大阪案内書ですから、真っ当な観光、グルメ案内ではありません。でも読むとなんとなく行きたくなるような場所と食事が紹介されています。大阪生活まもなく30年になる私にとっては、まあ、こんなものか、という内容でした。でも、ここにある風景や店も消えつつあるみたいです。大阪らしさも風前の灯?

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2009年8月18日 (火)

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村上春樹  新潮社

娘が熱をだしました。扁桃腺を腫らして熱を出すことが多いので、インフルエンザのことを考えずに近所の病院に連れていったら、先生に怒られてしまいました。診察室には入れてもらえず、検査をしました。結果は陰性でホッとしましたが、そういえば私の勤め先でも感染者が出たとメールがきていました。迂闊でした。予定していた墓参りは中止。二日間どこにもいけませんでした。
ということで、ゆっくり本を読むことができました。
豪い勢いで売れているそうですが、私にとっては少々期待はずれ。といっても、2日間でこの分量を一気読みさせてくれるのだから流石です。
ここから先はネタバレの可能性あります。
主人公の一人「青豆」。彼女のキャラ設定は最近読んだ片岡義男さんの「ハヤカワ文庫JA―片岡義男コレクション〈1〉『花模様が怖い―謎と銃弾の短篇』」の中の一篇に登場する女性と完全にカブってしまい、「青豆」として読み進めることができません。ストーリーの設定にしても、どっかで見た(読んだ)感じがして、私にとっての村上春樹作品として楽しむことができません。今までの(といっても「ノルウエイの森」以後はロクに読んでないけど)村上春樹作品を読んだときの、「頭に浮かぶフワフワした映像」が感じられないんです。
実在のカルト教団の汚い映像を頭から追い出すことができないのには閉口。具体的に映像として浮かんでくる部分の影響が大きすぎて、なんとなく頭に浮かんでくるべき部分に物足りなさを感じてしまうのです。残念でした。
宇宙飛行士の旦那がミステリマガジンに書いていたコラムによると、この続編はすでに「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」として発表されている、そうです。「世界の終わり~」は途中で投げ出し、本棚に眠っているはずです。再チャレンジしてみようかな。

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2009年7月16日 (木)

09015.片岡義男コレクション〈1〉『花模様が怖い―謎と銃弾の短篇』」

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片岡義男  ハヤカワ文庫JA

書いたことがあるかもしれないけど、片岡義男さんとの最初の出会いは高校生のとき。『20世紀最後の珍本 -5分間ごとに脳ミソがしびれる-』でした。クラスメイトの誰かが発見し、クラス中で廻し読み。授業中に誰かがクスクス笑い出す、という状況。衝撃的に面白かった記憶があります。その後は同一人物とは知らず、片岡義男名義のお洒落な小説を、憧れを持って、素敵な大人になりたいと思いつつ読み、過ごし、いつの間にか現実を知った私は、なんとなく安心できていい気持ちになりたいときに読む本になりました。社会に晒され、純粋な気持ちを失った後は遠ざかってしまいました。私にとってはとても大切な作家ですが、世間的にはシリーズ本がでるほどではないと思っていました。それが、さすが早川さん。彼のアンソロジーがシリーズで出版されたんです。
収録作品
心をこめてカボチャ畑にすわる/夜行ならブルースが聴こえる/白い町/夕陽に赤い帆/彼女のリアリズムが輝く/狙撃者がいる/花模様にひそむ
片岡流ハードボイルドの傑作たちです。懐かしく、でも、新鮮な気持ちで堪能できました。

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2009年5月16日 (土)

09014.さようなら、愛しい人

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レイモンド・チャンドラー   村上春樹 訳   早川書房

村上春樹さんによるチャンドラーの新訳第2弾。
旧訳は御存知、清水俊二さんによる名作「さらば、愛しい女よ」。
前作の「ロング・グッドバイ」の時の違和感は全くなく、一気読みで堪能。タイトルのダサさも許せます。マーロウの台詞もカッコよく、願わくは春樹ファンに沢山読んでもらって、この男の美学を理解してくれる女性が増えて欲しい。

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2009年5月 5日 (火)

09013.夜より暗き闇(上・下)

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マイクル コナリー   古沢 嘉通 訳  講談社文庫

ハリー・ボッシュのシリーズは順番に読みたいと思っていたのですが、図書館にあったので、思わず借りてしまいました。
ボッシュのシリーズとしては7作目のようですが、『わが心臓の痛み』という作品の主人公テリー・マッケイレブが実質の主人公です。また『ザ・ポエット』というノン・シリーズの作品の主人公、新聞記者ジャック・マカヴォイも登場します。それぞれの作品を先に読んでいたらもっと面白く読めたんでしょうね。やはり、コナリー作品は発表順に読むべきです。

元FBIのマッケレイブは、前の作品で心臓移植を受け一命をとりとめ、現在は引退。新しい家族と生活しています。そこに女性刑事からある事件のプロファイリングを頼まれます。彼の分析では犯人は、なんとボッシュ。そのボッシュは別の全米が注目する殺人事件の裁判の真っ只中。マッケレイブのプロファイリングと心情、行動と、ボッシュの裁判の様子が丁寧に描かれています。派手なアクションシーンや、気の利いた台詞は少ないのですが、細部まで語られる描写と緻密なストーリー展開は見事です。

解説によると、コナリーはチャンドラーの影響を多大に受けているようです。この作品のタイトルもチャンドラー作品からいただいているようです。主人公の二人の生き様について語られる部分は、ちょっと重たい気もしますが、読み応えがあります。ボチボチとこのシリーズは順番に読もうと思っていますが、つぎに読むのは村上版チャンドラー第2弾、「さよなら、愛しい人」。楽しみです。

今年の連休は遠出をせず、もっぱら娘と過ごしました。この作品、下巻はほとんどが、娘と彼女の友達3人を「キッズ・プラザ」に連れて行った時に読みました。娘一人を連れて行くよりも、友達も連れて行ったほうが、勝手に遊んでくれるので楽ですね。皆良い子ばかりだったので。

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2009年4月25日 (土)

09012.アイスマン

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ジョー・R・ランズデイル 七搦理美子 訳   早川書房

図書館で借りました。邦訳が早かった「ボトムズ」と2冊並んでいたのですが、原作はこちらが先のようなので、こちらから。ハップ&レナードのシリーズはほぼ読んでいたのですが、評判になった「ボトムズ」は、随分テイストが違うようで、読むのを躊躇していました。
母親の年金を頼って暮らす主人公。その母親が死んでしまい、食うに困って仲間と強盗を働く。たよんない主人公なので、うまくいくはずもなく逃げるハメに。迷い込んだのはマムシがウヨウヨ、蚊がブンブンの沼地。蛇嫌いの私にとっては辛い描写。思わず鳥肌。仲間も保安官も死んでしまい、フリーク・ショーの一座に助けられる。本筋はここから。異形の集団と暮らし、変化する主人公の行動と心境。そこに魅力たっぷりの身体を持つ女が絡んできて・・・。
ちょっと不思議な作品でした。聞くところによると、この作品の発展形が「ボトムズ」だということですが。またまた読むのを躊躇しています。この本の返却時には他の本を借りてしまいました。

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2009年4月18日 (土)

09011.寝室には窓がある

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AAフェア  田中小実昌 訳    ポケミス382

AAフェア=E・S・ガードナーの「バーサ&ラム」シリーズの1冊。 
解説は都筑道夫さんで「都筑道夫全解説」にも掲載の一編です。2月頃に古本フェアで買っていたのを思い出し読むことにしました。訳が小実昌さんなので買っていたのでしょうね。このシリーズとしては11作目のようですが、邦訳がポケミスで出版されたのはこれが最初のようです。カーター・ブラウンと並んで高校時代に父親の書斎からくすねて読んだシリーズ。懐かしく再読しました。
お色気たっぷりで洒落た会話が楽しめます。

バーサ・クールは90キロを越す大女。老人ともいえる歳のようですが、バイタリティ溢れ、金にうるさい未亡人。ドナルド・ラムは小柄な色男。多分30歳前後で元弁護士。バーサの探偵事務所にやとわれ、やがて共同経営者に。
この作品ではラムが小柄ながらダイナマイトボディを持つ魅力たっぷりの女性の罠に落ち、事件に巻き込まれ犯人に仕立て上げられます。ハード・ボイルドの亜流的シリーズですが、ストーリーはしっかりしていて、チャンドラーを思い出させる言い回しや、酒や車の描写も楽しめます。
多分初読時にはすべては理解できていなかったでしょうね。感受性が低く、晩生でしたから。原作は1949年、邦訳の出版は1954年。さすがに訳については?の部分もありますが、今読んでも古さを感じさせません。出版時のアメリカは日本では理解不能なほどの文化レベルだったということを再認識。1950年代の日本では電話のある家なんて少なかっただろうし、マイカーなんて夢のような話だったはずです。その頃に海外のミステリーを日本で紹介した都筑さんや小実昌さん他の凄さ。改めて尊敬します。
この作品のことを調べていて気がついたのですが、小実昌さんは私の高校の大先輩でした。当時は旧制中学で1年間だけ在籍したようです。 

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2009年3月31日 (火)

09010.都筑道夫ポケミス全解説

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小森収編集  フリースタイル

ハヤカワミステリマガジンの最新号の書評に掲載されていたのを読み、2700円もするのでちょっと迷ったのですが、自分への誕生日プレゼントとして買いました。装丁はポケミス・スタイルですが、フリースタイルというところから発行されていて、570ページもあります。もちろん凄いのは厚みだけでなく、中身は貴重な文章ばかりです。1956年から58年の3年間に書かれたものですが、その分量と中身の濃さは驚愕物。インターネットどころか、電話でさえも珍しかった時代に海外の小説についてこれだけの情報をどうやって集めたのでしょう。いったい都筑さんの頭の中身はどうなっていたのだろうかと、ますます尊敬の念は深まるばかり。彼は私にとってほとんど神と同等の存在です。

いまだに議論尽きることのない、「ハードボイルドとはなにか?」については、J・R・マクドナルド『犠牲者は誰だ』の解説に再録されている、50年も前に書かれた都筑さんの本質論以上の答えはないと思います。
『彼らは殴りあうだけではない』と題された本質論で、都筑さんは「ハードボイルド文学を歪められたロマン文学だと思う」と書いています。この派の文学の技巧上の秘密は「行動だけを正確に描写する」ことで、口に出して感情を言ってしまうと、つまらない感傷としか聞こえないというのです。

なるほど、私がハードボイルドの主人公に思い入れるのは、つまらない感傷を排除しながら、しみじみとした思いが伝わってくるからです。実際、無口で女性に対して感傷的または情熱的をいえない人間はモテないでしょう。でも、彼らはモテるのです。ここに私のハードボイルドに対するロマンがあるのです。洒落た台詞はいくらでもあるけど、それを理解してくれる女性は稀です。若い頃はそのことがわかっていなかった。男の本質を女性に理解して欲しいと思いつつ、現実には不可能に近いことを知っている。そんな人のための文学が「ハードボイルド」なんでしょうね。

いつもは読了したものをブログにアップしているのですが、この本は例外です。まだ読了していません。興味のあるものだけを読んでいます。ハードボイルドと呼ばれるジャンルのものが中心になります。チャンドラーやロス・マク、フェア、カーター・ブラウン、フレミング、等々。都筑さんの解説は読了後に読むと再読したくなり、本文を読む前に読むと、その面白さが倍増し、解説だけ読んだらその作品を読みたくなって、いてもたってもいられなくなる。

父親が書斎に全部ある、といっているポケミスを読むのを老後の楽しみだと思っているですが、まずは都筑さんが解説を書いているものから読んでみようと思います。ますます老後の楽しみが増えました。

こんな本を出す出版社って、と思いフリースタイルについてちょっと調べてみました。当然ハヤカワが出していると思っていたのですが。HMMに連載されていた都筑さんの「推理作家のできるまで」もここから出ていたんですね。私にとってはうれしいこだわりのある編集者がほぼお一人でやっている出版社のようです。彼が私より若いことにびっくり。頑張って欲しいものです。

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2009年3月 7日 (土)

09009.誇りは永遠に

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ギャビンライアル  遠藤 宏昭 訳
ランクリン大尉シリーズの4作目。1999年発表(オリジナル/日本語訳は2003年出版)。ライアルは2003年に亡くなったので、シリーズ最後の作品となり完結せず、ライアルの最後の作品となったようです。
フランスの無政府主義者相手に現英国国王のスキャンダル暴露を阻止すべく活動します。舞台はほぼロンドンとパリのみ。スパイ物らしく地味目の作品。何よりも不満は、コリーナが活躍あまり活躍しないこと。前作では酷いことやらせすぎたので、ランクリンが気を使ったところも大いにあります。とはいえ、とても楽しく読めたことは間違いない。この二人の関係の行く末がとても楽しみに思うのですが、続編が読めなくてとても残念です。

これも図書館で借りました。結局、シリーズ最初の作品は読んでいません。図書館にないから。どっかで探して読まなければ。

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2009年2月26日 (木)

未曾有の危機

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世界中が未曾有の危機の中、私の仕事についても例外ではありません。昨年末に「週刊ダイアモンド」、年明けに「東洋経済」が業界の危機についての特集を組みました。業界内部にいる私にとっては、今更ながらの内容です。テレビ、新聞、広告は酷い状況です。業界全体が構造を変えなければ、この状況から抜け出せないと思います。この状況に陥った原因は、インターネットを中心にしたデジタル技術の急激な発達が、放送と通信の境目を曖昧にしたことだと考えられます。広告収入に頼っていた、放送、報道の収益構造を変える必要があります。しかし、どう変えていくかについて真剣な議論になっている気配はあまり感じられません。
業界関係者は社会におけるそれぞれの使命を見つめ直すべきです。放送局、新聞社に代表されるメディアとその収入を担う広告会社は「自由」を守るための存在だとおもいます。民放テレビは「タダ」で見ることができると思われているかもしれませんが、各個人は、普段の消費活動によって支払う金額に含まれる広告費という形で、放送局対して膨大な負担をしています。放送局はすべての人に対して放送によって守られる「自由」や「権利」について責任を負っているのです。残念ながら、私の周りにはそんなこと考えている放送局の社員は見当たりません。広告主にも責任があります。広告主は放送の自由を守るためのコスト負担と引き換えに、自社の製品やサービスの宣伝ができるのです。そのコストは消費者が商品代として負担しています。広告主が放送局に支払う宣伝費については、その負担をしている消費者に責任を持たなくてはなりません。報道の自由を守るためのコスト負担=宣伝費は企業が負担しているのではないのです。
放送や通信の形態、特に誰がどのように負担していくのか、については真剣に考える時期です。技術の発展や社会環境の変化にメディア関係者、特に経営のレベルで追いついていないような気がします。これから先、メディアをどう維持していくのか、さまざまな考えがあると思います。メディア各社の存続のための経済的な考え方、どうお金にしていくのか、も大事だと思います。「メディア」の果たす社会的役割を見つめなおすことが一番大切なことではないでしょうか。

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2009年2月25日 (水)

文芸春秋3月特別号

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久しぶりに芥川賞受賞作でも読もうと手にしました。
しかし、受賞作よりも気になった文章が二つ。

ノーベル賞受賞の益川さんの文章「ノーベル賞 うれしくないと言った理由」。
自らの原爆体験から始めた彼の授賞式のスピーチには感動しファンになったのですが、この文章を読んで益々好きになりました。非常に常識的な方でご自身の社会の中でのポジションをきちんと認識しています。実験費用を政府が出していることに対する、納税者への感謝も記されています。また、最近の教育に対する苦言も賛同できます。親の態度、「教育熱心」ではなく「教育結果熱心」だという発言もごもっともです。私も最近、娘の塾についていろいろあり、反省したところでした。現在の教育、特に受験、進学については、合格することだけが目的となり、その先にある人生や社会的意義をどう果たすか、ということには全く言及されていません。その結果が、国民のことを考えない、政治家や官僚ばかりが跋扈する日本になっているのではないでしょうか。益川さんには研究のことだけでなく、平和や、教育についてももっと発言の機会を増やして欲しいと思います。

元、小渕恵三内閣の諮問機関「経済戦略会議」の議長代理の中谷巌さん。「竹中平蔵君、僕は間違えた」
著書『資本主義はなぜ自壊したのか~「日本」再生への提言』で話題になっています。こっちを読もうかとも思ったのですが、この文芸春秋の文章を読むだけで充分だったような気がします。過去に自分が行っていた言動(アメリカ流の新自由主義や市場原理主義、グローバル資本主義に対する礼賛言動、構造改革推進発言など)を自己批判し、180度転向したことを宣言した上で、小泉純一郎の行った構造改革を批判しています。私は実際行われた「構造改革」については大失敗だと思い、彼の今回の主張はほぼ賛同できます。ただ、結論めいたことが「社会へのまなざしが必要」というのでは論旨が弱すぎます。竹中の「構造改革が中途半端だから駄目なんだ」という主張には敵わない。経済、とそれに大きな影響を及ぼす「政治」にとって、「社会へのまなざしが必要」なのは当たり前の話です。学者であるならば、「社会へのまなざしがなければ、成り立たない」ことをもっと論理的に証明して欲しいと思います。

やっと本題
今回の受賞作は津村記久子さんの「ポトスライムの舟」。非正規労働者として働く女性の日常を描いた作品です。時節に適った作品だということでしょうか。芥川賞の受賞作についてはほとんどがそうなのですが、特に感想無し。といっても、一応チェックしていたのは90年頃までかな。最近、といっても、もう5年も前になりますが、読んだのが「蛇にピアス」。ここのところ女性作家ばかりが受賞しているようですね。ちなみに直木賞は天童荒太さんの「悼む人」と山本兼一さんの「利休にたずねよ」。天童さんは2000年に「永遠の仔」が大ヒットしているので、いつもながら、いまさらって感じです。でもどちらもちょっと読んでみたくなる作品です。

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2009年2月20日 (金)

09008.誇り高き男たち

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ギャビン ライアル  遠藤 宏昭 訳   ハヤカワ・ノヴェルズ

ランクリン大尉シリーズの3作目。図書館に1作目がなかったので3作目を読むことにしました。
オスマントルコ帝国でのバグダッド鉄道建設を巡る、ドイツ、フランス、そして英国の駆け引き。表向きはドイツに協力し、偽外交官となったランクリンが、現地の山賊に誘拐されたドイツ人鉄道技師の救出に向かう。
ランクリンのスパイ活動だけでなく、陸軍砲兵士官としての活躍とコリーナとの恋の行方、コリーナのお転婆ぶりといろいろ楽しめる一編です。ライアルの作品では、男心をくすぐる「乗りもの」が登場します。代表作「深夜プラス1」では自動車。シトロエンのDSがとても素敵な自動車に思え、憧れました。「もっとも危険なゲーム」と前回読んだ「誇りへの決別」では飛行機。この作品では「オリエント急行」。しかも皇帝専用列車を特別に接続したものだから鉄ちゃんならずとも垂涎ものです。豪華ヨットも登場。このへんのディテールを丁寧に読むだけでも楽しめる作品です。なんで今まで読んでなかったのだろう・・・・。

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2009年2月15日 (日)

09007.不良読本

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小説現代 特別編集  講談社

小説現代の別冊でメインは「小説 傷だらけの天使リターンズ魔都に天使のハンマーを(矢作俊彦/市川森一)」。この矢作さんの作品は昨年ハードカバーで購入し読みました。今頃になってこちらの小説現代版が先にでていたことを本屋の店頭で知り、思わず買ってしまいました。数編の短編小説他、エッセイ、漫画が掲載されています。「不良」をテーマにしたエッセイは執筆者それぞれの個性が出ていて、とても面白かったです。やはり私よりも年上の全共闘世代というのでしょうか、彼らの過ごした時代は、ノホホンと育ち、感受性の低かった私にとっては、とても羨ましく思います。一歩遅れてあの時代を過ごせなかったのは私にとってのコンプレックスとなっているようです。椎名誠さんが若い頃相当の武闘派だったという話はちょっと意外でした。
その他の収録内容
クライアントに手を出すな(ヴァシィ章絵)/背中の助六(東郷隆)/よしやがれ(犬飼六岐)/ホテルパシフィック(横木安良夫)/エッセイ 私の不良論(不良の精神(浅田次郎)/超不良(花村萬月)/無印不良品のできるまで(椎名誠)/不良の品格(石田衣良)/いでよ。(山本一力)/零式傷だらけの天使(海道龍一朗))/爆笑冒険記 にょろり旅TAKE1 高く跳べ(青山潤)/漫画 陽だまり(安西水丸)

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2009年2月14日 (土)

09006.誇りへの決別

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ギャビン・ライアル  遠藤宏昭 訳  早川書房

ランクリン大尉シリーズの2作目。しまった、1作目から借りるべきだった。何も考えずに図書館で借りてしまいました。
舞台は1913年のヨーロッパとUK。戦争に向けてイタリア、セルビアやオーストリアが対立している時代。主人公のランクリン大尉が所属するのは草創期の英国情報部。彼はイタリアの急進派国会議員ファルコーネの警護を命じられる。実用化されたばかりの飛行機や機関銃などの兵器や、それを使った領土争いなど、激動のなかでのスパイの活躍。
ギャビン・ライアルといえば「深夜プラス1」。私のベストミステリーの中の一つです。大好きな作家のはずなのに、マクシム少佐シリーズもこのシリーズもほとんど読んでいませんでした。この本の発行は2000年。ちょうどハードカバーの新刊を買わなくなった時期です。でも、図書館で見かけてもすぐには食指が動きませんでした。装丁がなんとなく気に入らないのです。だけど、読んでみると私の好みにピッタリ。登場人物の性格や描写、台詞がとても良い。押し付けがましくない細部へのこだわりも随所に。2段組351ページを1週間かけてじっくり堪能させていただきました。

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2009年2月 5日 (木)

09005.CIA

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ブライアン・フリーマントル   新庄哲夫 訳

冴えない中年スパイ「チャーリー・マフィン」シリーズで知られているフリーマントルのノンフィクション。前年の「KGB」に続いて1984年に発行されたもの。現在では絶版。仕事中に立ち寄った古本フェアで手に入れました。
CIAの歴史書ともいえる内容。御存知のようにアメリカは大統領によって政治の方向が大きく変わります。戦後設立されたCIAの歴代大統領との関係を中心に、議会や軍、FBIと、どう付き合い、キューバやベトナム、アフリカで何をしてきたかが書かれています。東西冷戦時代だから敵はソ連。イデオロギーの対決ですが、アメリカが守るべきものは「自由」。ソ連は「体制」だから、スパイ活動においてはCIAの動きにはKGBに比べ多くの制限が課せられる。その中で、莫大な費用と人材が投入された。随分と酷いことや稚拙なことをやっていたようです。本書では「パパ・ブッシュ」がCIA長官になった頃までのことが書かれています。その後の話を読んでみたい。
と、ここまで書いてきたけど、読むのに苦労する本でした。歴代大統領の順番も良く判らず、民主党、共和党の区別もつけられない。文章も読みにくいし、登場人物も多すぎる。原文に忠実な訳なんだろうけど、整理された日本語で読みたかった本です。

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2009年1月23日 (金)

09004.朝倉恭介 Cの福音・完結篇

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楡周平  宝島社

嬉しいことに、娘が読書に嵌っています。学校の図書室でお気に入りのシリーズに出会ったらしく、すごい勢いで読みまくっています。基本的に欲しい本はすべて買ってあげることにしているのですが、さすがに毎日1冊のペースでは無理。土曜日の午前中、娘のスイミング・スクール(私はその間ジョギング)のあとに図書館に行くことにしました。この本はその図書館で借りた1冊。

「Cの福音」に始まる楡さん作品は悪役ヒーロー「朝倉恭介」と正義のジャーナリスト「川瀬雅彦」の2ライン。これは完結篇。ついに朝倉と川瀬が対決します。朝倉が日本で作り上げたコカインの密売システム。完璧だと思われたこのシステムが、危機に陥る。CIAエージェントとして取り込まれてしまっている間に任せた人間の出来が悪かったから。リカバリーを図る朝倉は知らぬ間にCIAに追われ、ジャーナリストの川瀬にもマークされてしまっていた。私の好みからするとドンパチや舞台装置が派手すぎるのですが、頭を空っぽにして読むには最適なシリーズでした。前5作は99年、娘が生まれる前に発行されているので、ハードカバーで発行され読んでいました。この完結篇は01年発行。ハードカバーを買うのを止めていたので、読み損ねていました。

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2009年1月20日 (火)

09003.裏のハローワーク

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草下シンヤ  彩図社

これも古本屋で購入。200円じゃなかったら絶対に手をださない本です。怪しげな商売と言われている職種の当事者インタビューをまとめたもの。内容はマグロ漁船、大麻栽培、治験バイト、夜逃げ屋、偽造クリエイター、裏DVDショップ、等々。書かれている内容に大したものはなく、どの職種もだいたい、これまでに読み、聞きした情報による想像通り。しかし、当事者に直接聞いた内容であることは貴重。どれも私にとってはコストパフォーマンスが適切だとは思えず、従事する人は得られる「金」だけでこれらの商売を選択したのではないような気がします。

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2009年1月11日 (日)

09002.ウルトラ・ダラー

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手嶋龍一  新潮社

9・11テロ事件で画面に出ずっぱりだったNHK元ワシントン支局長の作品。これも古本屋で100円。ウルトラ・ダラーは北朝鮮が作る偽100ドル札。この偽札をめぐるイギリス・アメリカの諜報員のお話。主人公はBBCの特派員で家柄、学歴サイコーのイケ面スパイ。日本で優雅な生活をしている嫌な野郎です。プロットや登場人物の設定は私好みのはずなのに、読んだ感触はイマイチ。登場人物がカッコよすぎる。描写が平坦で説明的。主人公の車がMGなのは許せるけど、ヒール&トウの説明なんかして欲しくないです。気の利いた台詞も皆無。登場する日本の官僚も、趣味が良くて、気概も能力もあるなんて、日本の現状を考えるとリアリティなさすぎ。やはり手嶋さんは小説家ではなく、ジャーナリストなんでしょうね。もっとノンフィクションっぽく書いてくれていたら気に入ったかも。矢作さん作品の次に読んだのがいけなかったのかもしれない。ドキュメンタリーだったら読みたい人です。

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2009年1月 8日 (木)

09001.さまよう薔薇のように

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矢作俊彦  光文社

新年会が予定より早く終わったので、途中下車して独身時代に住んでいた街を散歩。古本屋の100円コーナーで見つけました。江口寿史のイラストの装丁が気に入っている作品です。私が結婚した年の年賀状は、この表紙のシチュエーションの写真を使いました。年賀状には腕だけの出演ですが、拳銃を私に突きつけているのが妻です。結婚式当日に二人で写したものを公開しました。誰もこのギミックには気がつきませんでしたが。
私の本棚からいつの間にか消えていたので、再び手に入れることができて嬉しかったです。
横浜で路上駐車の車を動かして違反を逃すことを生業にしている、元検察事務官が主人公の中篇3連作です。水商売の人相手の商売なので、ややこしいことに巻き込まれてしまいます。主人公の乗る車はアメ車のオープンカー「フェアレーン」。古き良き時代最後の横浜が描かれています。1984年の発行。あの頃は私も横浜といえばお洒落な街で、手に負えないけど魅力的な女性が棲息していたと信じていたのでしょうか。

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2008年11月23日 (日)

08018.フロスト気質(下)

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いつものように次々起こる事件。誘拐、殺人・・・・。行き当たりばったり、でも熱心に。年をとったようで、その物忘れの度はひどくなっているし、人情脆さが増してきた気がします。7年ぶりに堪能しました。
ウィングフィールド氏も亡くなっていて、未訳は残り2冊?早く読みたいような、楽しみは取っておきたいような・・・。今回も年末ベストは1着間違いないかな。

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2008年11月21日 (金)

08017.フロスト気質(上)

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フロスト警部シリーズの4作目。過去3作は分厚い1冊だったけど、ついに上下2巻での登場です。今回もセクハラ親父が大活躍。読んでいる間はほとんど仕事になりません。下ネタ炸裂、ますます下品で仕事中毒のフロストますます快調。

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2008年11月 1日 (土)

08016.ローマ人の物語34

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迷走する帝国[下]  塩野七生  新潮文庫

皇帝アウレリアヌスは騎士団長出身。指導力抜群だったらしく、内政改革を実施、外交でも帝国領土を取り戻すなどの実績を残したものの、やはり、目の前しか見えない部下の短慮で殺されてしまう。そんな中、キリスト教が静かに広がっていく。

ローマ帝国の興隆は多神教国家で、他の宗教に対して寛容であったことが理由の一つであることは間違いないと思います。ローマ皇帝によるキリスト教徒への迫害は、その教義を受け入れられなかったのが原因ではないと作者は考えているようです。世が逼迫してくるとスケープゴードが必要になるというのです。現代社会ではイデオロギーの対決よりも、宗教的対立が問題になっています。日本は宗教に寛容だと私は思うので、世界平和に貢献することができると常々考えているのですが、ローマが起こしたものと同じ間違いを犯しているような気がしてなりません。

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2008年10月31日 (金)

08015.ローマ人の物語33

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迷走する帝国[中]  塩野七生  新潮文庫

浴場建設で有名なカラカラ帝が遠征中に部下から殺されてから、兵士による皇帝殺しが続き、元老院議員ではない軍人皇帝が続出。政治を長い目で見ることができなくなり、ついに皇帝ヴァレリアヌスがペルシャに捕えられます。
作者はこの時期のローマ衰亡の原因の一つが、皇帝カラカラの「アントニヌス勅令」により属州民にも市民権が与えられたことだと考えているようです。ローマには奴隷が存在したので、人間を差別していたように思われがちですが、そこに存在したのは「差別」ではなく「区別」だったようです。政治家、軍人、ローマ市民、一般市民、属州民、奴隷がそれぞれの立場をわきまえていたことが、広大なローマ帝国を安定させていた要因でした。属州民にも市民権が与えられたことにより、その立場が曖昧になり、それぞれが無責任になってしまったのではないでしょうか。区別が曖昧になるとそこに格差が現れます。他と差別化する指標が「金」「力」になってしまうんですよね。
千年以上も前の話で、いまさらその内容を変えられるわけではないのに、読んでいて歯がゆい思いをしてしまいます。ローマ人と筆者の持つ魅力からなんでしょうが、今、私たちが同じような閉塞感の現実を目の前にして、何も出来ない歯がゆさと重ねてしまうからかもしれません。

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08014.ローマ人の物語32

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迷走する帝国[上]  塩野七生  新潮文庫

ハードカバーでは2年前に全15巻完結していますが、文庫版では32冊目、12巻。長いローマの歴史の終盤に入ってきました。語られるのは期限211年から284年までの73年間。22人もの皇帝が入れ替わった時代です。ローマの歴史で「三世紀の危機」と特筆されるこの時代の難題は、蛮族の侵入、内戦、国内経済の疲弊、地方の過疎化。目の前の危機に対応するのが精一杯で、本質を失い、危機が深刻化していったようです。まるで、現代社会と同じではないですか。読むたびに、人間って全然進歩していないと思います。

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2008年10月29日 (水)

08013.半島回収

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溝呂木省吾  角川書店

小説の中の時間は2008年秋、つまり、まさに「今」。朝鮮半島をめぐる中米の動きを、登場人物の中の日本人としては唯一常識的で有能な内閣情報官室運用課の蓬莱の視点を中心に書かれたものです。

金正日が突然訪中し緊急入院、危篤との噂。中国、アメリカの海軍が不可解な動き。そして、平壌に火の手があがる。これ、実は読了したのは北京オリンピックが終わった頃で、数日後に本当に金正日の危篤説が流れました。現在も彼の消息についてはいろいろな噂が絶えません。この状況下、もっと話題になっていい作品だと思うのですが、巷ではあまり話題になっていません。黙殺されてるって感じです。日本の外務官僚や首相、自衛隊の面々が無能さをさらしているのですが、その滑稽さもあながち創作ではなく、本当ではなかろうかと思うのが今の日本の現状です。さすがに作者も、この時期の首相交代までは予想できなかったようで、作品中の首相は、客観的に物事を見ることが出来る、あの方がモデルのようです。作品最後近くの「どっかで聞いたことある条文」というのには、思いっきり笑えました。作品中でも日本は米中に思いっきりコケにされるのですが、現実社会でも、アメリカによる北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除については完全に日本は無視されましたよね。

作者は「謎の大型新人」ということですが、各国の軍隊組織、装備や官僚のシステムについてのマニアックな記述や、「理解できない奴は読むな」と言って、作者自身が楽しんでいそうな文体、そしてどっかのサイトの新刊案内に「著者:矢作俊彦(仮)」ってあったことからも、矢作大将の作品に間違いないと思います。過去の作品でもあったコラボ復活という噂もあります。仕事を放り出して一気読み、大いに堪能しました。

この作品での北朝鮮の結末は、あり得ない話でしょうが、理想的な解決のような気もします。そう思うと、現実の日本の立ち回り方も見えてくるかもしれません。

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2008年8月 4日 (月)

08012.傷だらけの天使 ・魔都に天使のハンマー

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矢作俊彦 講談社

本読む時には心構えが要ります。作者やタイトル、書評などの事前情報から先入観をもって読み始めます。この心構えを間違えると、本を読むペースが掴めません。今回はこの「心構え」がちょっと難しかった。これは大好きな矢作俊彦さんの作品です。彼の作品はそれぞれ心構えを変える必要があります。この作品のことは事前情報がほとんどなく、出版されたことも知りませんでした。タイトルから30年も前に一世を風靡したTVドラマの後日譚だとわかります。しかし、記憶が定かではありません。私が矢作さんの作品に出会う以前のドラマです。憶えているのは「あ~にき~」という亨(水谷豊)の台詞。有名なオープニングの映像さえ松田優作の「探偵物語」と被っています。出版を知りすぐに買い、何の心構えをせずに読み始めたので、序盤はちょっと戸惑いがありました。とはいえ間違いなく私好みの作品で最初からグイグイ引きこまれたのです。心構えのためにドラマを見直してから読めばもっと楽しめたかもしれません。

ドラマのラストシーンから30年。木暮修は公園での宿無し生活。新宿での生活を全く捨てたつもりだったけれど、仲間が暴行されるという事件から再び舞い戻ることになります。超アナログの修がケータイ、ネットのバーチャルと現実が入り混じった陰謀にまきこまれ、昔馴染みも登場しての大活躍。矢作さんらしく、どのキャラクターも魅力的。素敵な台詞満載。こだわりに満ちています。新宿の映画館で「相棒」の舞台挨拶が行われていたりの「くすぐり」もあり。久々の純粋お楽しみ系作品です。是非映画化して欲しいのですが、岸田今日子さん、岸田森さん、亡き今では難しいかな。

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2008年5月21日 (水)

08011.納棺夫日記 増補改訂版

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「納棺夫」。亡くなった方を棺に納める仕事です。昔からある職業だと思ったのですが、著者がその先駆けのようです。嫌な話なのですが、職業に貴賎はないとは言いながら、明らかに人の嫌がる職業は存在します。葬儀関係の仕事もその一つです。どうも人間が避けて通れない場面に関わる職業の中に嫌われるものが多くあるような気がします。今一番お金を稼いでいる人々の職業は、絶対に必要な職業なのでしょうか。
納棺夫というのは人間の「死」に関わる仕事です。死体を触るのは誰にとっても嫌なことでしょう。でも、誰もその「死」を避けることはできないのです。筆者は亡くなった方の親族の思いを汲み取り、御遺体を丁寧に扱うことにより、この職業の地位を築いたのです。それは人間の「生」と「死」に向き会わなければできないことです。この本は職業にまつわる悲喜こもごもとともに、人間の「生と死」について真剣に考えさせられる内容になっています。医学の進化により生じた延命治療の是非にまで踏み込んでいます。人間いつ死ぬのか判らないのだから、いつ死んでも満足できるように生きるべきなのでしょうね。とっても難しいことですね。

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2008年5月14日 (水)

08010.クレイジーヘヴン

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垣根涼介 幻冬舎文庫

仕事中にふと立ち寄った古本屋で購入。店主らしきおじいさんは友人らしい方に肩のマッサージをしてもらっている最中。350円の値札が付いていたのですが、300円にしてくれました。

主人公は関東の地方都市で旅行代理店に勤める坂脇。27歳。平凡なサラリーマンだけど、孤独で破滅型性格ながら常識的で冷静。職場で上司を殴り退職したり、車上荒らしの犯人を自ら捜し当てボコボコにしたりしながらも、普通に暮らしていた。ある日、馬鹿な同僚を脅した美人局のヤクザを殺してしまい、その情婦圭子23歳と暮らし始め、生活が狂ってくる。
坂脇と圭子、それぞれの視点で描かれるのだけれど、どちらも狂気に向かいながら心の内には常識をわきまえている。常識を持っているが為に弱みに付け込まれ堕ちていく。人間の強さや弱さ、常識、非常識、大袈裟にいえば、どう生きるべきかを考えさせられるかもしれない作品。さらっと読めて後味も悪くありませんでした。

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2008年5月 4日 (日)

08009.変わらぬ哀しみは

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ジョージ・P・ペレケーノス  ハヤカワ文庫

「デレク・ストレンジ」シリーズの最新刊です。正直このシリーズ、「ワシントン・サーガ」のシリーズと比べると、私にとっては入れ込むことの出来ないシリーズでした。今回もペレケーノスの新刊ということで半分は義務感から読みました。ところが、今までのストレンジ・シリーズとは違います。序盤はデレクの幼い頃のエピソード。ちょうど私が生まれた頃です。最近幼少期の話にやたら弱くなっているので、ちょっと辛かったけど、デレクが夢かなって警官になってからは一気に引きずり込まれました。これぞ、ペレケーノスの真骨頂。差別、貧困、戦争に影響され、堕ちきった人間、抵抗しながらも堕ちていく者、それでも自己を律し幸せに暮らすべく努力する人。クールにこだわりを貫く人。キング牧師暗殺にかかわる暴動という大事件までを当時のアメリカ社会に翻弄される普通の人々の描写はお見事です。

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2008年3月16日 (日)

08008.ホルモー六景

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万城目学  角川書店

「鴨川ホルモー」のサイドストーリー、オムニバス六話。それぞれに趣向が凝らされていて楽しく読めました。1作目はいろいろ考えながら読んだような気がします。「ホルモー」が何か解からなかったから。それが解かって、何も考えずにスイスイ楽しく読めた気がします。過去の人物と現在の人物との関わらせ方には脱帽です。完全にやられました。もう一作いけるかな?

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2008年3月15日 (土)

08007.鴨川ホルモー

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万城目 学      産業編集センター

4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作だそうですが、この賞のこと知りませんでした。現在放送されているドラマ「鹿男あをによし」の原作者のデビュー作です。

タイトルだけでは内容を全く想像できない。梗概を読んでも何のことだか、本編読んだ後でもストーリーを説明するのはとても難しい。簡単に言うと、京都を舞台にした学生たちの、あるサークル活動を描いた青春(半分ラブ)ストーリー。このサークルがとっても不思議。「京都大学青竜会」という名前からして、とっても怪しげ。メンバーたちはとても不思議な力を会得し、「京都産業大学玄武組」「立命館大学白虎隊」「龍谷大学フェニックス」と「ホルモー」を戦うのです。最近の学生は私たちの頃とは全く違う恋愛感情を持ち、生活していると考えていたのですが、ここに描かれるのは、大昔から受け継がれているらしい「ホルモー」に翻弄されながらも、私が学生の頃と変わらぬ学生たちの生活。でも、大きく違うのは古式ゆかしい?「ホルモー」と現代的な「携帯電話」「メール」「コンビニ」。この対比がとてもユニーク。どれだけ生活が便利になっても、人間は古来よりのしがらみから逃れられないのでしょうか。適度の知的刺激、思わずあんぐりしてしまう展開、ちょっと胸キュンとなったりと、楽しく読めた1冊でした。

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2008年3月 6日 (木)

08006.紅雲町物語

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吉永南央   文芸春秋

母は実家に帰り私を産みました。北関東にある市で、母の実家の近くには大きな川があり、その畔にある病院で私は産まれたそうです。この作品の主人公「杉浦草」76歳の日課はこの川原への散歩です。私の母の実家は紅雲町です。今は叔父が住んでいます。祖父母は私が幼い頃になくなり、ほとんど記憶がありません。私は九州に住んでいたので、母の里帰りも頻繁にはできなかったようですが、なんとなく居心地が良い街の雰囲気とこの川原へ従姉妹と遊びに行ったことはかすかに記憶があります。帯に「おばあちゃん探偵、走る!」とありますが、内容を端的に表しているとは言い難いコピーです。ミステリ・マガジンにも書評があったから一応ミステリの分類に入るかもしれませんが、杉浦草は自分のことを探偵だなんて思っていません。日常の生活の中で身近な人のことが気になると、知らんぷりはできず関わってしまいます。その関わり方も、お節介の押し付けではなくとてもよい感じです。登場人物は基本的に皆良い人。それぞれに事情を抱えながら普通に生活している。その普通のなかのちょっとしたこだわりや何かが事件になってしまいます。取り上げられる問題は深刻なものだったりするのですが、気持ちよく読めて読後は暖かい気持ちになることができました。私の記憶にある紅雲町もこんな気持ちにさせてくれる町です。

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2008年2月16日 (土)

08005.普通の家族がいちばん怖い―徹底調査! 破滅する日本の食卓―

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岩村 暢子 新潮社
「変わる家族変わる食卓」で晒された食卓の実態、「“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死」で気が付かされた食卓の幻想。第3弾がこれ。クリスマスとお正月の食卓の実態から現代社会が抱える問題が浮き彫りになります。高校生の子供にサンタが実在すると信じさせることに注力する母親。イルミネーションの飾りつけは一生懸命なのに、料理の手作りは一切なし。お節を作る親を一切手伝わない子供。でも、一番の問題は「料理は手作りに限る」「日本の伝統は後世に伝えるべきだ」などと言いながら、一切を行動に移していないことだと思う。
「お節」は、裕福な家がお正月中使用人が休みなので、休み前に作らせたものだったのではないか。だったら、高級なお節セットを買うという行為はおかしくない。また、少なくとも、ちょっと前までは正月三が日は何もかもが休みだったから、食事をまとめて作っておく必要があった。現在では正月から何でも手に入るのだから、作り置きの必要は無い。クリスマスはキリスト教の行事。信者以外は何もすることは無い。滅多に作らない料理だったら調理済み冷凍食品のほうが美味しいに決まってる。でも、何もしないことへの罪悪感はだけはある。言い訳も用意されている。そこが問題。コンビニ弁当でもインスタント食品でもいいじゃないか。言い訳しないでどうどうと使おう。でも、それが私たちにとって本当にいいことなのかは考えるべき。
アマゾンのレビューはネガティブなものが多いです。まあ、この本の内容を信じたくない人が多いでしょうから。帯にある養老さんの「S.キングより怖い」は本当でした。

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2008年2月10日 (日)

08004.“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死

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岩村 暢子   勁草書房

「変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識」の続編。

「変わる家族~」では現代の家族の食卓について驚愕の事実が晒されました。もはや家族団らんの食卓は幻想に過ぎない、ということでしょうか。こんな娘たちに誰がした。親の顔を見てみたい。ということで見に行ったのがこの本です。

母親手作りの数品のおかずが並ぶ食卓に家族が揃う日本の伝統的光景は幻想だと最初に気付かされます。和洋取り混ぜた色とりどりのメニュー、クリスマスの御馳走や、正月のおせち料理、手作りのケーキやパン。これらは幼い頃に戦争で苦しみ、価値観を変えられた母親世代が、戦後家事の負担が少なくなることにより、一代で作り上げたものです。代々受け継がれたものではなかったのです。終戦により一夜にして思想を根底から強制的に覆された母親世代は、自分が信じるものが絶対に正しいと思う自信がないようです。自信がないから、子供たちに強く伝えることができません。せっかく作り上げた母親のノウハウが子供に伝えられることはなかったようです。

この本を読んで、食の問題だけでなく現代社会が抱えるいろいろな問題の中身が見えたような気がしますが、解決策は見えません。それにして日本が過去に犯した最大の罪、「戦争」。私たちの今を考えるにすべてに影響しているのですね。

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2008年1月19日 (土)

08003.ライラの冒険「琥珀の望遠鏡」上・下

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P・プルマン 新潮文庫
「ライラの冒険」3部作の完結篇。
パラレルワールド全体に渡る争いに完全に巻き込まれたライラとウイル。ライラは母親に拉致され一時はウイルと逸れてしまいます。再会を果たした二人は死後の世界にまで足を踏み込みます。一方、ウイルと同じ世界に暮らしていたメアリーも二人に出会うために別の世界に足を入れます。琥珀の望遠鏡を自ら発見、製作し、パラレルワールド全体に起こっている「何か」のヒントを見つけ出します最後まで読んでも、ハッキリとした結論は良く判らなかった。どうやら「死生観」について書かれたファンタジーのような気がします。人間が死ぬとどこに行くのか、すべての生は誰かにコントロールされているのか。すごく簡単に言うと、人間の幸せってなんだろうってことですね。大人になると失ってしまう何か、死んでしまうと何を失うのか、それを考えさせられる話でした。難しいこと考えないで、ライラが大人になるための冒険物語として読むのが正解かもしれません結論的なものとしては、「輪廻転生」「極楽浄土」かな。唯一神を否定しているようにも感じられます。一部、アメリカのカソリック信者がこの作品のボイコットをしていると聞きました。まあ、そんなこともありうるだろうと思う内容でした。

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2008年1月12日 (土)

08002.ライラの冒険「神秘の短剣」上・下

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P・プルマン 新潮文庫「ライラの冒険」3部作の第2部。ライラは自分が暮らしていた世界を抜け出し、違う世界に行きます。ウイルという少年に出会いますが、この少年、もともと私たちと同じ世界で暮らしていたようです。パラレルワールドにはそれぞれの世界を行き来できる窓(穴)が空いています。その穴を自由に開けることが出来る短剣を二人は手に入れます。ライラの世界で起こっている「何か」は、どうやらこの「窓」が空いていることに関係しているようです。そしてライラの持つ真理計とウイルの持つ短剣は重要な役割を果たすもののようです。「黄金の羅針盤」に登場したキャラクターの活躍の場は少なく、話が進むにつれ謎が深まり、ライラとウイル自身もどこに向かっているのか良く判らないようです。どこに向かっているのかを知りたいという興味だけで読みきった気がします。唯一神の存在を基本としていない、私を含めた多くの日本人にとって難しい話だという思いがますます強くなりました。宗教というのは人々に救いを与えるものだけど、争いをももたらすものであることにも気付かせられます。ライラの強い意志、ウイルの母親を思う気持ちが救いです。

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2008年1月 7日 (月)

08001.ライラの冒険「黄金の羅針盤」上・下

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P・プルマン 新潮文庫お転婆な11歳の女の子ライラ。彼女はイギリス・オックスフォードなんだけど、ちょっと違うパラレルワールドに住んでいます。人々は皆一匹ずつ生き物の形をした「ダイモン」という守護精霊を連れています。親をなくしたライラは大学寮で大人たちに囲まれて暮らしています。そんな彼女が大人たちの目論見に巻き込まれ、自分自身の考えに目覚め、気付き、真実を求めるために戦う物語です誰が敵で、誰が味方かわからない。世の中で起こっていることも理解できない。どうやらこの地球に生きるものすべてに影響する根源的な問題で、宗教的なものらしい。ライラの持つ黄金の羅針盤は真実を教えてくれるのだけれど、誰でもが読めるわけではない。どうやらライラは特殊な能力を持つ選ばれし子供のようです問題はキリスト教の原罪にあるらしく、創世記のアダムとイブにまで及ぶようです。宗教的で哲学的でもある難しい話で、序盤はとても読むのが辛かったです。後半ライラに引きつけられる、魅力的なキャラクターの持ち主とともに活躍し始めると面白くなってきます。結局謎は解けないのだけれど、難しいこと考えないで楽しく読むべきなのだろうか

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2007年12月 5日 (水)

07020.正当なる狂気

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ジェイムズ・クラムリー  小鷹信光 訳   早川書房

James Crumley    THE RIGHT MADNESS

私立探偵「C・W・シュグルー」シリーズ3作目。12年ぶりの登場。会いたかったよシュグルー!

やってくれましたクラムリーおじさん。ホンマ油断も隙もあったもんじゃない。ちょっと気を抜いて読むと訳判んなくなってまう。詳しくはもう一回読んでから書くことにします。狂気を正気で読むのはホンと楽しい。

NAHAマラソンのお供にしました。じっくり堪能。

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2007年11月26日 (月)

07019.影絵の騎士

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大沢在昌   集英社

未読の新刊を古本屋で購入。

50年後の日本。スラム化した東京。TVネットワークが絶大なる権力を手中にし、一度は壊滅した映画産業が復活。東京はこの2大勢力を中心に回っている。主人公は探偵。愛する人を亡くし小笠原で隠遁生活を送っていたが、10年ぶりに東京へ。巨大な陰謀に巻き込まれる。

設定は面白くて、前半はテンポ良くスイスイ読めたのですが、最近の大沢さんの傾向がこの作品にも表れていて、後半は辻褄を合わせるための説明的で説教臭い展開になってしまってます。

今のTV業界を見ていると、日本を牛耳るほどに優秀な人材が出てくるとは思えないのですが。

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2007年11月18日 (日)

07018.ミッドナイトイーグル

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高嶋哲夫  文春文庫

出張先で本屋に行ったら著者のサイン会をやっていたので、本を購入しサインしていただきました。お客さんが誰もいなくて暇そうにしていたので少し話をしました。隣のシネコンでこの後舞台挨拶があるそうです。

高嶋さんは原子力の研究者でしたが、挫折して食べて行く為に作家になっったそうです。なるほど、端的で読み易い文章です。ストーリーもなかなか良くて、本人曰く、プロットを最後まで決めないで何となく書いているそうでが、そうは思えません。違う作品で「サントリーミステリ大賞」と「読者賞」を初めて同時受賞したというのは納得です。ただ、気の利いた会話などはなくて私のお気に入りではありませんでした。

映画では登場人物の設定が少し違うようです。これまでに2回映画化の企画を断り、3回目にして満足できる話がきただけあって、高嶋さん自身、脚本には満足しているそうですが、1ヶ所だけ不満があったそうです。プロデューサーにはその話をしたのですが、はぐらかされてしまったそうです。

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2007年11月 5日 (月)

07017.マンハッタン・オプⅡ

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矢作俊彦  ソフトバンク文庫

ハードボイルド短編集。舞台はマンハッタンで、主人公は名無しの探偵。

あとがきは関口苑生さん。矢作さんの「ハードボイルド」について書いてあるまじめな解説です。この文章を読むだけでこの本を買って良かったと思います。

江戸川乱歩も「ハードボイルド」の定義についてはよくわかっていなかったそうです。昭和29年の「別冊 宝石」に乱歩が「チャンドラーについて」を書いているのですが、アメリカでのチャンドラー評の紹介のみで、乱歩がどう思うのかは書いてありません。私も定義なんてどうでもいいほうですが、チャンドラーを「ハードボイルド」の正統だとすると、その文体を矢作さんはちゃんと継承していると思います。ただ、文体だけが「ハードボイルド」ではない様で、そのへんのもどかしさを矢作さんは感じ、この作品をパロディだなんて言っているのでしょう。とにかく、作者の「へそ曲がり度」が大きい事だけは感じられる作品たちです。このへそ曲がり度を楽しめる人が増えること願います。乱歩が書いて中に、「高級な人でなければチャンドラーに憑かれる心配はない」と紹介されています。今、日本に真に高級な人ってどれだけいるのだろう。

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2007年10月31日 (水)

07017.マンハッタン・オプⅠ

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矢作俊彦  ソフトバンク文庫

ハードボイルド短編集。舞台はマンハッタンで、主人公は名無しの探偵。

1980年5月~83年9月までFM東京、23:45~ 月~金ベルトの10分番組としてOAされたラジオドラマのノヴェライズ。ナレーションは日下武史さん。とてもカッコいい番組でした。この時間はちょうど「ジェットストリーム」の直前。城達也さんのナレーションも懐かしいです。FMが大人のラジオ局だったんですね。

81年にCBSソニーからⅠ、Ⅱ。85年に光文社から「凝った死体」「笑う銃口」「はやらない殺意」。5冊出版されていて、私もすべて読んでいる(はず)。今回はソフトバンク文庫が4冊にまとめて復活させたようです。

この作品、矢作さんは「悪意が仕込まれたパロディ」で、「小説」ではなく「読み物」だと言っているそうです。彼のことだから、「ハードボイルドの短編集」なんて言い方も気に入らないと思います。でも、「ハードボイルド」と呼ばれる代表的な作家のエッセンスを取り入れた、矢作さんらしい文章はとても素敵。音楽を聴くように「感じる」ための作品です。

と偉そうに書いていますが、ほとんどが「解説」の受け売り。Ⅱ以降の解説を読むのも楽しみです。

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2007年10月14日 (日)

07016.四つの雨

Blog_006

ロバート・ウォード  田村義進 訳  ハヤカワ文庫

職場の先輩にいただきました。ペンズラー、クラムリー、コナリー、ペレケーノスなどが賞賛、とありますが、信じられないほどの駄作。私の好みには全く合わない作品でした。プロットとしてはまあまあ、面白く読めそうなストーリーなのですが、進行が平板、キャラクターの造型も悪くないとは思うものの、全く作りこまれていません。会話の面白みもないので、読み飛ばしてしまいました。

本当に彼らが賞賛したのですか?

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2007年6月20日 (水)

07015.冷戦交換ゲーム

071207blog_013

ロス・トーマス   丸本聰明 訳  ハヤカワミステリ(ポケミス)

原題:The Cold War Swap(Spy in the Vodka) (1966)

再読です。http://mystery.spaces.live.com/blog/cns!65E19D5C6B7B47C!163.entry?fl=cat

邦訳の初版は1968年。初読の際のブログに書いていますが、数年前に加藤さんが早川書房に直接問い合わせ、手に入れた色褪せた最後の1冊をお借りして読みました。加藤さんはロス・トーマスの未訳が多く、邦訳された古い作品もなかなか手に入りにくいことを日頃から嘆き悲しんでいます。ポケミスが1800号を突破した記念に4名の作家がそれぞれ2冊選んだポケミスに、推薦文の帯を付けるというこのフェアを実施。原りょうさんが選んだ1冊がこの「冷戦交換ゲーム」。という訳で、私は真新しいのを彼の顔写真のおまけつきで手に入れることができました。

デビュー作でMWA賞受賞。主役はマック&パディロ。私が初めて読んで、ロス・トーマスにハマることになった「黄昏にマックの店で」が続編です。舞台は大戦後のドイツ。いまや壁があったなんて知らない人も多いですよね、ベルリンに。その壁のこっちとあっちで西と東の緊張みなぎる駆け引きが。やり取りされる会話が私にはたまらない作品なのですが、やはり日本人受けしないのか、これを読んだ同僚のウケは良くなかったです。

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2007年4月27日 (金)

07014.再起

Blog_002 ディック・フランシス  北野寿美枝 訳  早川書房

大好きなフランシスの「競馬」シリーズを久々に堪能。昨年末の6年ぶり刊行はシド・ハレーが4回目の登場です。訳者はずっと菊池光さんだったのですが、昨年末に亡くなったので今回から北野さんです。自ら菊池さんの弟子だと仰っています。フランシス=菊池さんの文章は淡々としていて、しっかり読まないと登場人物の思いを読み取れなかったように感じていたのですが、奥様を亡くしたフランシスが変わったのか、訳者のせいなのか、この作品ではハレーの感情が素直に伝わってきたような気がします。ハレー自身も歳をとって、愛する彼女もできて、前作までとは随分ウェットになっています。元義父もお元気で、元妻との関係も改善。なんか、ハレーの次作も読めそうな雰囲気です。

このシリーズ、毎年末に出ていたので、寒い季節にヌクヌクの部屋でじっくり読むのが楽しみでしたが、今回は4月の過ごしやすい気候のなか、通勤電車で堪能しました。

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2007年4月23日 (月)

07013.Kの日々

Blog_003 大沢在昌  双葉社

主人公は「裏の探偵」「木」。3年前、ヤクザの組長誘拐犯人の二人に、共犯者で身代金を隠したまま死んだ中国人、李の恋人Kの身辺調査を依頼される。彼女の魅力に惹かれていく木。

大沢さんらしいプロットは、とても甘いけど、好きだし、登場人物の設定も好み。でもとても物足りない。クドクドした説明が多すぎる。主人公の動きが足りない。マーロウ、スカダーの直後に読んだので不満は増大。結末が予想できるストーリー、それを主人公にウダウダ説明されるとイヤになります。木は男として甘甘で、気の利いた台詞もなし。

大沢さんの作品はすべてハードカバーで買っているので、これも躊躇しつつ、迷いに迷って、発行から随分時間が経って買ったのですが、後悔してます。

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2007年4月20日 (金)

07012.冬を怖れた女

Blog_005ローレンス・ブロック  田口俊樹 訳  二見文庫

スカダー・シリーズの2作目。一度は読んでいるはずだけど、このタイトルは記憶に無かったので、ブックオフの100円コーナーで見つけて購入。

刑事が警察内部の腐敗を告発。しかし、それがきっかけなのか、娼婦が彼を恐喝で告訴し、殺される。当然刑事が疑われ、スカダーに調査を依頼。

スカダー・シリーズの紹介はすべて「ハードボイルド」作品として紹介される。当然、チャンドラーの流れを汲む作品。「ロング・グッドバイ」「長いお別れ」の直後に読んだために、頭の中は完全に「マーロウ」モード。すぐにスカダー・モードに 切り替わったものの、二人を比較しながら読んでしまいます。自分の行動に対する、理解するに難しいこだわりが共通点でしょうか。台詞もうまい。各章の最後の文章を読むのが楽しみ。そして最後の一言。良いですね。

2作目なので、スカダーはまだ酒を飲んでいるし、エレインはチョイ役です。この後、「1ドル銀貨の遺言」「暗闇にひと突き」と続き、最高傑作といわれる「八百万の死にざま」です。禁酒してないとスカダーらしくないですね。

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2007年4月 7日 (土)

07010.ロング・グッドバイ

0703book_002 レイモンド・チャンドラー  村上春樹訳  早川書房

初出から約半世紀。村上春樹さんの新訳となると誰もが興味を持ちます。私は清水俊二訳で少なくとも3回は読んでいるはずなのですが、読んだ端から忘れてしまうので、新鮮な気持ちで読むことができました。清水訳よりも読み易い気がして、スイスイ、でもじっくり読ませていただきました。訳者の「あとがき」から読んだので、村上さんと、清水さんの翻訳作法の違いを頭に入れながらの読書ですが、私には具体的な違いは判りません。なんとなくですが、マーロウの生きた時代が身近に感じられたような気がします。

改めて感じたこと。マーロウって本当に嫌な奴。わざわざ会話相手が怒らせてしまう、言わなくてもいいことベラベラしゃべるし。読んでいてイライラさせられるところ多数。何をこだわって生きているのかとても理解しがたい。でも、判るような気がするし、うらやましくも感じさせられる。金、家族、女、にこだわらないで生きていけるなんて、信じられない。だから「憧れる」のでしょうか。

何度読んでも新しい発見があります。ハードボイルド系の多くの作品が、チャンドラーに影響されているのは間違いありません。読み進むごとに、いろいろな作品のシーンが、この作品のここと同じではないか、と気が付いて、それもまた楽しいものです。例えば、最近読んだコノリーのボッシュなんて、根底はまったくマーロウじゃないか、なんて思ってしまうのです。

もっと詳しく書きたいけど・・・。次はすぐに清水訳を再読します。

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2007年3月 9日 (金)

07009.象の背中

0703book_004_1秋元康  産経新聞社

産経新聞に連載されていたそうです。あの「おにゃんこ」の秋元さんです。

肺ガンで余命半年と宣告されたサラリーマンのお話。主人公の年齢は私とほぼ同じ。身につまされる部分も多いのですが、カッコ良過ぎです。帯には「理想の死」「男の身勝手」と論争を生んだ、とあります。彼は一切の延命治療を拒否して、残された時間で自分の人生と関わった人たちに、「遺書」を残そうと決めた。といっても、沢山の手紙を書いたわけではありません。彼の置かれた環境が実際のサラリーマンにとっては有り得ないほどめぐまれた、というか、とにかくカッコよすぎるんです。ちょっと白けてしまいました。

私も、死ぬまでに、私に関わってくれて、今では疎遠になっている人にもう一度直接会いたいと思うことがあります。死ぬときにはそのすべての人にお礼を言いたいとも思います。

しかし、そのことを小説にするにはこんなにカッコイイ設定にしないと成り立たないのでしょうか。私の人生経験では売れる小説のネタになんかならないですね。と、言いながら私にとっては充分面白い人生だと思っています。

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2007年3月 2日 (金)

07008.12番目のカード

0703book_005 ジェフリー・ディーヴァー  池田真紀子 訳  文藝春秋

ハーレムの高校に通う十六歳の少女ジェニーヴァが博物館で一人の男に襲われそうになる。単純な強姦未遂事件と思い捜査を始めたライムとサックス。何か別の動機があることに気づく。そこにジェニーヴァの先祖である解放奴隷チャールズ・シングルトンが関与していた。ライムの頭脳が、百四十年も前の証拠物件を最先端の科学捜査技術を駆使して解明する。

リンカーン・ライム シリーズの第6作だそうです。私は1冊も読んでいませんでした。あれだけ話題になった「ボーン・コレクター」も読んでいなかったのです。ボッシュ・シリーズとともに、何故か敬遠いていたようです。1月に短編集を読み、気に入ったので、会社の同僚から借りて読みました。「ありがとうございます。Tさん」

その短編集は「このミス」2位。この長編は6位でした。

どんでん返しの繰り返し。誰かが「ジェットコースター・ミステリー」と呼ぶのも納得。次の展開が待ち遠しくて、読むページが進みます。私の好きな、キャラクターの粋な台詞を楽しむ、というタイプではありませんが、ボリュームのたっぷりの御馳走をガツガツ喰らう、という感じで楽しめました。次は文庫化されている1作目「ボーン・コレクター」から順に読む気になりました。

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2007年2月24日 (土)

07007.ブラック・アイス

0703book_003マイクル・コナリー  古沢嘉通 訳    扶桑社ミステリー

ハリウッド署の刑事、ボッシュ・シリーズの第2弾。

モーテルで刑事の死体が発見され、自殺と判断されるが、偽装であることが判明。捜査から外されたボッシュは密かに事件の裏を探る。他の殺人事件とも根が同一であることに気付き、新しい麻薬「ブラック・アイス」の製造工場のあるメキシコで犯罪組織のボスを追う。

面白かったです。ボッシュのキャラクターといい、何気ない台詞まで考えて書かれているようだし、ストーリーやプロットも前作よりもすっきりしているような気がします。ただ、メキシコの牧場や工場でのドンパチはセセコマシイ日本しか知らない私にはうまくイメージできないです。映画で観てみたいですね。映画化されてるのかな?

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2007年2月19日 (月)

07006.市民ヴィンス

070219_000601ジェス・ウォルター  田村義進 訳    ハヤカワ文庫

ドーナッツ屋で働くヴィンス。カード偽造と麻薬の密売を裏稼業にしているが、まっとうな暮らしを望んでいる。そんなある日、なにものかがヴィンスの命を狙い始めた。

ヴィンスは日本ではちょっと理解できない「証人保護プログラム」によって過去を捨て、それまでは縁も所縁もなかった土地で生活している。ちょっと変わった男。ミステリマガジンの書評では、彼が毎週新しい本を買い、読み切らないうちに本屋に売り飛ばし、新しい本を買うのだが、その理由が書かれていなかった。その理由を知りたい為に買ってしまったようなもの。証人保護プログラムに保護された人間の暮らし、カード偽造や麻薬の密売の方法など、ちょっとそそられるものはあったけど物足りなさも大いに感じられた作品。

時代は1980年。カーターとレーガンが戦った大統領選挙真っ只中。思えば、アメリカが大きく舵を切った年だったような気がする。「4年前と比べて暮らしは良くなったか」と候補者の一人は作中で問いかけている。それから20年以上経った今、私達の暮らしは良くなっているのだろうか。次作は9・11を題材にした作品らしい。

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2007年2月11日 (日)

07005.ナイトホークス(下)

070211_215201マイクル・コナリー  古沢嘉通 訳    

扶桑社ミステリー文庫

ボッシュ・シリーズの第1作。一匹狼のロス市警の刑事であるボッシュは身内に監視されながらFBIの女捜査官エレノアと捜査を継続。どんでん返しの連続です。とってつけたようにも感じられ、ボッシュにとって都合が良すぎるんじゃないの?とも思うけど面白かったです。

このシリーズは10年以上も続いていて、毎年のように刊行されているようなので、しばらく楽しみが続きます。古本屋で2作目もゲットしました。

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2007年2月 4日 (日)

07004.ナイト・ホークス(上)

070204_232501 マイクル・コナリー   吉沢嘉通 訳    扶桑社ミステリー

ヴェトナム戦争の悪夢に悩まされるロスの刑事「ボッシュ」。パイプの中で死体で発見されたのは、かつての戦友メドーズ。一匹狼のタフな刑事のシリーズ第1作です。

もろ私の好みの作品。なのになぜ読んでいなかったのか不思議です。1992年の作品なので、そのころは気に入ったものを片っ端から読んでいたはずなのに。何か避ける理由があったんでしょうね。下巻を楽しんで読書中。

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2007年1月28日 (日)

07003.おそらくは夢を

ロバート・B・パーカー  石田善彦 訳  ハヤカワ文庫

Blogパーカー版フィリップ・マーロウ 『大いなる眠り』の続編で、1991年(日本では92年「夢を見るかもしれない」)に発表されたものの文庫化です。読んでいるはずだと思ったのですが、未読だったようです。パーカーは89年にチャンドラーの未完の遺作「プードル・スプリングス物語」を書き継ぎ完成させています。これの評判がイマイチだった。私も読んでがっかりしました。で、これは登場人物や舞台はそのままながらも、全くの新しい作品。随所のに“前作”が引用されています。出来としてはまあまあ、だと思いますが、やはりチャンドラーに敵うわけはありません。チャンドラーの訳の解らん、だけど鮮やかにイマジネーションをかきたてる、比喩だらけの文章(素晴らしい文章という意味)を踏襲しようとしているようですが、常識的な人間では無理。また、文章に説明的な意味を感じさせない、不親切なチャンドラー。パーカーはどうしても読者に親切になってしまうようです。

マーロウは、スターンウッド家の執事ノリスから失踪人捜索の依頼をうける。当主の将軍はすでに亡くなり、長女ヴィヴィアンが入院させた次女のカーメンが姿を消していた。立ちはだかるのは巨大な権力。どんな意味があってマーロウはそれに対抗するのか?

チャンドラーのマーロウよりも読み易いマーロウという感じでした。

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2007年1月17日 (水)

07002.クリスマス・プレゼント

070116ジェフリー・ディーヴァー  池田真紀子他訳   文春文庫

「このミス」海外篇2位。どんでん返しの玉手箱!と帯に書いてあるし、書評も解説も誉めまくっています。なるほど、期待しながら読んでいることもあり、どの短編も読み初めから結末がどうなるのかドキドキしながら、先に結末を読みたくさせられ、最後はお見事と手をたたきなるような16作品550Pでした。原題は「TWISTERS(捻り) 」。なるほど、これほど内容を端的に表したタイトルはないですね。

ディーヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズはなんとなく手を出すのをためらっていました。唯一の短編がこれに納められています。この長編は「このミス」6位に入っています。こちらも読んでもいいかな、と思うようになりました。

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2007年1月 7日 (日)

07001.明日香の皇子

070107_231301内田康夫  講談社文庫

作者の内田康夫さんはドラマ化もされている「浅見光彦」シリーズや旅情ミステリーで有名です。作家になる前はCM製作会社の経営者だったそうです。その経歴を活かしてか、この作品の主人公は広告会社勤務です。なんとなくどこの広告会社か判るようなきがします。タイトルから想像するとおり、日本古代史と現代を結びつけた、ロマンミステリー。広告会社の若い社員が、日本を代表する大企業の経営者の問題ある過去と現代の犯罪に巻き込まれます。主人公も悪者も「物質的繁栄が精神的堕落を生んでいる」という考えは共通するものの、その解決の仕方の方向が正反対なので対立することになります。

この作品が発表されたのは1984年。今から20年以上も前です。現在進行している日本の右傾化への心配が、この作品に描かれています。作者は身の程知らずに哲学や思想や理想を語ることを虚しいあがきだと後書きで書いていますが、大衆文学が世に与える影響こそが大であるとも言っています。その通りですね。正直、これも作者自らが書いていますが、作品としては素人っぽいものです。プロットは良いと思うのですが、文章や台詞はこなれていません。しかし、作者の思いは伝わってくる作品だったと思います。

正月、帰省時に父から貰って読みました。今年の1冊目。期待しないで読んだのですが、なかなか良かったです。

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2006年12月31日 (日)

My all time best mysteries

2006年も残り僅かです。

これまでの私の読書人生を少しだけ振り返ってみました。オールタイム・ベストです。

とにかく、読んだ端から内容を忘れてしまうので、ここにあげた作品もよく覚えていないのですが、読んだときの衝撃を記憶している作家と作品です。他に思い出したら変わるかもしれません。順位はつけられません。

コナン・ドイル シャーロック・ホームズ 「緋色の研究」
小学生の時に病床で読み、所謂「推理小説」に興味を持ち本を読むようになりました。
ホームズに出会わなければ本好きにはならなかったでしょう。

レイモンド・チャンドラー 「プレイバック」
 「しっかりしていなければ生きてゆけない。優しくなれなかったら生きている資格がない」
この台詞のかっこよさでハードボイルドに嵌りました。

カーター・ブラウン 「死体置場は花ざかり」
高校時代、父親の書斎にあったポケミスをむさぼり読む。
アル・ウィラー警部や女私立探偵メイヴィス・セドリッツなどのシリーズキャラクターが活躍する
お色気たっぷりの軽ハードボイルド。とにかく憧れた。

ギャビン・ライアル 「深夜プラス1」
とにかくかっこ良かった。シトロエンが欲しかった。ヨーロッパに行きたかった。

エド・マクベイン 「酔いどれ探偵カート・キャノン (Curt Cannon)」
87分署シリーズ「警官嫌い」を選ぶべきかもしれませんが。

ディック・フランシス 「利腕」
毎年年末に暖かい部屋で新作を読むのが楽しみでした。
最高傑作はやはりこれでしょう。

ローレンス・ブロック 「八百万の死にざま」 マッド・スカダー・シリーズ
翻訳ミステリーをむさぼり読むことになるきっかけはこれかも。

ロス・トーマス 「黄昏にマックの店で」
ベストの中のベストはこれかもしれない。今まで読んだ本の中で一番好きなタイトル。
もちろん中身も最高。

アンドリュー・ヴァクス  「フラッド」 悪役バークシリーズ
私の探し求めていたものはこれだ、なんて思ったものです。

ジェイムズ・クラムリー「酔いどれの誇り」
私にとってもっとも衝撃的な作品。

何か大切なものを忘れているような気もしますが、まあ、こんなところでしょう。
思い出したら更新します。でも、落とす作家、作品はないですね。そん時は追加か。

良いお年をお迎えください。

来年もよろしくお願いします。

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2006年12月30日 (土)

このミステリーがすごい! 2007年版

061229 国内版でランクインした作品のうち読んでいたのは、東野圭吾「赤い指」の1冊のみ。同僚に借りて読んだもので、正直ランクインするような作品だとは思いませんでした。大沢在昌「狼花 新宿鮫Ⅸ」はこのミス購入後に読みました。ベストテン作品のうち是非読んでみたいのは香納諒一「贄の夜会」。なんと12年ぶりの作品だそうです。佐々木譲さん、宮部みゆきさんのものも読みたいけど、国内版はほとんどがハードカバーなので腰が引けてしまいます。

海外版1位はド本命、ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」。今年はこれにつきますね。ジェイムズ・カルロス・ブレイク 「荒ぶる血」 は昨日読了。
ディーヴァー「クリスマス・プレゼント」と並んで2位の作品です。
「あなたに不利な証拠として」はダントツだったようで、2位は同着です。ディーヴァーは6位に「12番目のカード」も入っています。作家別では1位ですね。
読みたい作品は、コナリー「天使と罪の街」、ディーヴァーの2冊。海外版は文庫が多いので、手が出しやすいです。珍しく読んでいたハイアセン「幸運は誰に?」は11位でした。ペレケーノスが今年2冊出たのですが、どちらも選外。厳しいですね。

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06037.荒ぶる血

061229_009ジェイムズ・カルロス・ブレイク  加賀山卓朗 訳  文春文庫

暗黒街の殺し屋、ジミー。暴力で生きることしかできなかった男。その身にはメキシコ革命で恐れられた非情な闘士の血が流れる。彼が国境の南から逃げてきた女と出会ったとき、宿命の歯車が血と硝煙の匂いを発して回り出す。スタイリッシュなノワールと荒々しい活劇小説を融合させた掛け値なしの傑作。激情と慟哭が荒野を裂く。
裏表紙より引用

このミス2007 海外版2位の作品。ウエスタン・クライム・ノベルってな感じです。

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06036.狼花 新宿鮫Ⅸ

061229_010 大沢在昌  光文社

新宿鮫こと鮫島、5年半ぶりの登場です。
国際犯罪者・仙田、キャリア警官の香田とお馴染みのキャラが登場しますが、鮫島の彼女、晶はほとんど出てきません。残念です。
仙田が作り上げた泥棒市場を追う鮫島、外国人犯罪者を一掃するために限界を
超えようとする香田。「国」「個人」とは何かをそれぞれが考えながら物語がすすみます。

それにしても、鮫島が年をとったのか、やたらと心情の描写が多いです。
大沢さんが年をとったのでしょうか。
小泉さんが好き勝手やったあと安倍さんが総理になって「美しい国」とか言い出して、日本が右に向かって傾いていきかねない現在、個人と国との兼ね合い、市民と公務員との兼ね合いが問われているいるような気がしているのですが、大沢さんもそこを気にしているのでしょう。

初期の作品ほど、読んでいてドキドキしなくなりました。このシリーズもそろそろ継続が辛くなってきたかな。

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06035.黄昏にマックの店で

061229_008 ロス・トーマス  藤本和子 訳  ハヤカワ文庫

昔のことなので、記憶が定かではないのですが、多分この作品が私がロス・トーマスを読んだ最初の作品です。タイトルに惹かれてハードカバーで読んだ記憶があります。今回読んだのは私の本棚から引っ張り出してきた文庫版なので、読むのは少なくとも3回目ですね。

主人公は元殺人課の刑事、宝くじを当てて現在は俳優。スパイだった父親が死んで、過去の仕事を暴露した自叙伝の版権を残します。これが世に出ると大変だと思う人間が数人いて、駆け引きが始まり、殺人まで起こってしまいます。やはりスパイで現在はレストランを経営する、マックとパディロがこの騒動に巻き込まれます。

ロス・トーマス作品としては後期のもので、脂がのりきっているといえるでしょう。彼の最高傑作は「女刑事の死」といわれているようですが、私はこの作品がベストです。ロス・トーマスの作品を読むたびに書いていますが、とにかく台詞が素晴らしいです。ここに出てくる男女の会話を私も実際に経験したいものです。でも、理解してもらえないでポカンとされるか、笑われるかでしょうね。もちろん、男同士の会話はもっと素晴らしいです。こんな会話をできる友人が欲しいです。って、私自身がその域に達してないですね・・・。

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06034.女刑事の死

061229_007ロス・トーマス   藤本和子 訳  ハヤカワ文庫

八月の熱気の中、女刑事が自動車に乗り込んだ瞬間、爆炎があがった―刑事だった妹が、非業の死を遂げた。上院の調査監視分科委員会で働く兄のベンジャミンは、真相を探るために帰郷する。だが分科委員会から受けた密命を遂行せねばならず、思うように真相究明はならない。やがて謎に満ちた妹の私生活が徐々にあきらかになるが…。サスペンスの巨匠の醍醐味を詰め込んだ、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
(裏表紙の紹介文より)

傑作です。

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06033.五百万ドルの迷宮

061229_006 ロス・トーマス  ハヤカワ文庫

フィリピン新人民軍の指導者を五百万ドルで買収し、香港へ亡命させろ―テロリズムの専門家ストーリングズのもとに大仕事がまいこんできた。彼は工作を手伝ってもらうため、中国人ウーとそのパートナー、デュラントら、海千山千のプロを極東に集結させる。それぞれの思惑が交錯するなか、五百万ドルをめぐる虚々実々のゲームが開始された!巨匠の代表作。 (裏表紙の梗概より引用)

解説は原尞さん。ミステリマガジンに掲載された追悼文「ロス・トーマスの魅力」も掲載されていてお得ですが、現在手に入れるのは難しいみたいです。この作品は「ウー/デュラント/アザガイ/ストーリングス/ブルー・シリーズ」のたぶん2作目で、他は「大博奕」「獲物」のようです。これもまた手に入れるのは大変みたいです。原さんは「ロス・トーマス作品が全訳されることを勝手に夢見る会」の設立を提案していますが、実現されなかったようです。未訳作品がたくさんあります。

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2006年12月16日 (土)

06032.赤い指

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東野圭吾 講談社
直木賞受賞第一作だそうです。

「早く帰ってきてほしいんだけど」。
前原昭夫が、妻から切羽つまった様子の電話を受けたのは、金曜の夕方だった。重い気持ちで家に帰ると、庭に幼い少女の遺体が。部屋に閉じこもる息子のやったことなのか。
事件と向き合うことで昭夫は、家族と向き合うことになるが──。

読んだのは随分前です。アップし損ねてました。内容も余り覚えていません。同僚に借りて、仕事の移動の間に一日で読みました。じっくり読もうと思うほど面白くなかったということでしょう。東野圭吾さんは、もともと好きなタイプの作家ではではないのですが、『白夜行』の衝撃は凄かったです。しかし、その後の作品では期待を裏切られているばかりです。貸してくれた同僚は『容疑者Xの献身』よりもましだったと言っていましたが、まあ、似たようなもんです。

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2006年12月10日 (日)

06031.珍奇絶倫 小沢大写真館

Blog061210小沢昭一   ちくま文庫

著者の小沢さんは私の父の同級生だそうです。遊びを知らなかった父が小沢さんに頼んで「玉の井」に連れて行ってもらったことがあるそうです。小沢さんは慣れているので玉の井の路地をスイスイ行ってしまい、父は袖を引かれてなかなか前に進めず、抜けたときにはシャツの袖がなかった、という話を聞いた覚えがあります。

小沢さんは俳優さんで写真館のセガレで、民族芸能、風俗の研究者です。この本は写真+取材集。風俗を画像と言葉で切り取っています。ラジオ番組「小沢昭一的こころ」で知られる、おしゃべりの名人ですから、この本の写真も文章も素敵で、しかも記録、資料としても素晴らしいものです。娼婦、ゲイ、ストリッパーなど、世の中で偏見を持たれる人々に対する愛情が伝わってきます。

ちょっと長めの引用です。

進駐の置き土産?でもありがたいのは、平和と性の解放だ。‘鬼畜米英’が残したものでも、いいものいい、ありがたいのはありがたい。

日本人は負け慣れていないから、負けたが故にそうなったことに、ある屈辱感を持っているが「負けるが勝ち」ってことばもあるじゃないか。負けたおかげで、世の中、昔よりは絶対よくなった。

もっとも、その後、またぞろ勝ちたくなった。戦争ではなく経済というやつで。

GNPとかいうものの、世界2位の勝利だってさ。ほら、そのおかげで、日本の‘土’と、日本人の‘いのち’がメチャメチャになりつつある。「公害ハンタァーイ」と騒いでいた頃が、まだ花だったなァというように、いずれ、日本の自然と命が根だやしになるにちがいない、このままなら。

だから、

戦争だけじゃなく、経済にも、負けましょうよ。貧乏の国でいいじゃない。国の中の貧富の差がひどいのはお断りだが、みんなで貧乏になろうよ。いまから4,50年前くらいの貧乏になろうよ。・・・・・・・・・ええと、何の話だったっけ。

小沢さんと私の父は、終戦直後の新制大学で同級だったそうです。軍国主義の中で命を捨てろと教育されて育ち、いきなり新しい風の中に放り出された世代です。私自身も貧乏でいいじゃないか、という考えに賛成です。政治や経済を引っ張っていく人の中心が戦後育ちの人たちになって、戦前の恐い時代が蘇ってきそうな気がして心配です。小沢さんの気持ちを私達息子世代も引き継ぐべきだと思います。

登場する人々の言葉は、今の政治家なんぞに比べると、含蓄があり何よりもこだわりと責任感が伝わってきます。 この本を読んで、写真を見れば、貧乏でいいじゃないかという気がするのは私だけではないでしょう。風俗の世界も最近は味気ないものになっているような気がします。金や物じゃなく人間を大事にしましょうよ。そんな気にしてくれる一冊です。

あとがきでは、私の出身地の風俗街をめぐっておられます。私も一度お供させて欲しいものです。

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2006年11月18日 (土)

06030.ローマ人の物語29

すべての道はローマに通ず [下]   塩野七生  新潮文庫

061111rome_002水道、医療、教育について書かれています。

水道はローマ街道と同じく技術的にも素晴らしいもので、2000年近く経った今でも使えるものらしいです。街道と水道は皇帝、すなわち「官」が建設、管理していて基本無料。ローマ人にとってのインフラとは生きていく上で最低限必要なもの。指導者層はその整備、維持をするのが使命だと認識していたようです。

医療と教育については民間に任されていたようです。公立の病院、学校はなかったようですが、医者、教師が活動する自由と制限はカエサルによってきちんと整えられていました。その制度は理にかなっているように思います。

現在、日本では「教育基本法」が改悪されようとしています。論点は「愛国心」。これは強制されるものではなく、皆がそう思える国を政治家が作るべきものではないでしょうか。昔は優秀な子供がいると、「末は博士か大臣か」と言ったものですが、今となっては死語になっています。政治家の汚職や国民を馬鹿にした政治の進め方で、政治家はダーティーなイメージになってます。誰も今の政治家に憧れたりしてません。「教育基本法」を変えるよりも、ローマの皇帝や指導者のように、国民にのために働き、尊敬される政治家が現れれば、愛国心は皆が持つことになると思います。

ローマでは大衆の人気が政治に直結していたようです。富は名誉についてくるものだったのではないでしょうか。やらせの討論会を開いて国民の声を聞いたことにするなんて、正当性はまったくありません。ローマ人の物語を読んでいると人間って進化してないんじゃないかと思ってしまいます。

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2006年11月11日 (土)

06030.ローマ人の物語28

すべての道はローマに通ず [上]   塩野七生  新潮文庫

061111rome_001オリジナルでは10巻目になるこの巻はローマのインフラについて書かれています。[上]ではローマ街道についてです。

どのローマ時代でも感心するのですが、ローマ街道については特に感心させられます。ローマ人にとってのインフラは「人間が人間らしい生活を送るための大事業」という重要性を知っていました。また、自国の防衛を、異民族との往来を促進することによって実現したのです。是非、今の日本の役人や政治家に読んでもらいたいものです。って、読んでも彼らには真意を理解できないでしょうね。一般のローマ人たちも、全体の利益を優先してまっすぐな道を作ることに何の疑問もなかったようです。この辺も見習わなくてはなりませんね。もちろん、技術的にも、制度的にもすぐれた道でこの時代に生きた人たちが羨ましくなります。

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2006年11月 1日 (水)

06029.硫黄島の星条旗

ジェイムズ・ブラッドリー  ロン・パワーズ  島田三蔵 訳

文春文庫Bk93

クリント・イーストウッド監督作品「父親たちの星条旗」の原作

「硫黄島からの手紙」は日本軍の物語。近日公開されるそうです。

第2次世界大戦における硫黄島での戦いで摺鉢山に星条旗をかかげる海兵隊員の写真。「世界で最も美しい戦争写真」と言われているそうです。その写真に写っている6人の兵士達の物語、ドキュメントです。

硫黄島はサイパンと東京の中間にあります。アメリカ軍と日本軍の戦いは1ヶ月続きました。島の形が変わってしまったと言われるほどのアメリカの攻撃に日本軍は洞窟陣地で頑強に抵抗しました。日本軍は2万1千人、アメリカ軍は2万6千人もの死傷者を出しました。ここでのアメリカ軍の勝利が日本本土への空襲、原爆の投下を可能にした、太平洋戦争の帰趨を決める重要な転換点になりました。

私は全く知らなかったのですが、硫黄島の星条旗の写真は、アメリカでは大きな話題になり、そこに写っていた6人のうち生き残った3人は英雄扱いで、戦時国債の募集に利用されたそうです。

この6人を丁寧に取材したドキュメントです。

皆、ごく普通のアメリカの若者達。決してこの6人だけが英雄だったわけではありません。死にたくも殺したくもなかったのです。しかし、生き残った3人は地獄のような戦場から帰還した後は戦争のための資金集めをしなければなりませんでした。それぞれの心中に葛藤を抱えてその後の人生を過ごします。

兵士を英雄として扱ったドキュメントではありません。あくまでも普通の若者達と家族の物語です。読んでいて辛くなるばかりでした。でも、戦争の悲惨さを私達は知って、二度とこの過ちを犯すことのないようにするべきだという思いをますます強くしました。

誰も幸せになってないんです。この戦争で。

今の北朝鮮問題。日本が太平洋戦争の泥沼に嵌った時と状況が似ています。なぜあの大統領は戦争ありきでしか物事を考えないのでしょう。それに同調する日本の政治家の最近の発言にも恐くなります。

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