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2019年11月28日 (木)

19025.テニスプロはつらいよ

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『テニスプロはつらいよ』 井山夏生


私のテニス歴は50年。高校大学は体育会に所属。しかし、大学入学してすぐに練習についていけず学生テニス連盟の仕事することになりました。就職はテニス関係も考えないこともなかったけれど、好きなことを仕事にすると辛いと思い、その気になればテニスの仕事もできる広告会社へ。
ということで、テニスは下手くそだけど、テニス関係者に多くの知り合いがいて偉そうにしています。
同期では数人がプロになりました。
30歳の頃。そのうちの一人で親しくしていたプロに、
「成績も振るわないし、そろそろ今後のこと考えるべきじゃない?」
なんて、偉そうなこと言ってしまいました。
自分自身のことも考えなければいけない時期だったし。
そしたら、彼は直後の全日本プロで優勝。結局40歳過ぎまでトーナメントに出場していました。といっても、賞金だけで生活できるわけもなく、企業の援助があったと思うし、苦労もしたと思います。あるトーナメントでダブルス優勝。表彰式で授与された特大の小切手に書かれた賞金は、たしか25万円。ダブルスだから二人分です。一週間の滞在費を考えると足が出ます。本人たちには悪いけど、笑ってしまいました。笑えない話なんですけど。
その後は、実業団、ユニバシアード日本代表の監督など日本のテニス界で裏方として現在も活躍しています。

その彼も登場するこの本は、プロテニスプレーヤー関口周一さんのお話です。
テニスに特段興味がなくても、錦織圭くんの名前なら知っていますよね。フェデラーやナダルも。関口選手のことを知っているとなるとかなり熱心なテニスファンです。
彼のテニスデビューから24歳までのことが書かれています。丹念に取材されています。そしてプロテニス界の仕組みと現状がわかりやすく説明されています。テニスのツアープロを目指し、暮らすのは、本人だけでなくその家族も本当につらいのです。特に金銭面で。

私が入会していたテニスクラブは関西でトップジュニアを数多く輩出していました。ジュニア育成のために砂入り人工芝のコートからハードコートに改装されました。トーメントクラスは月5万円。この金額を誰が出せるのだろうと思っていました。ところが、娘が受験する時期になってわかったのが、有名高校や大学に進学するための塾や予備校にも同じくらいの費用がかかること。なるほど、そのクラブの外壁にかかる横断幕には、所属ジュニアの有名大学への進学先と人数が大々的に書かれていました。テニスの成績だけで、勉強が全くできないのに大学に行けてしまうというのも考えものだと思うのですが(自分のことを省みて…。)、進学のための投資としては成り立ちます。
関口選手は進学よりもツアープロを選択しました。経済的な面だけ見れば、進学して就職したほうが生活は安定していたと思います。ただし、人生の満足度は本人次第。人生何が良かったかなんて死ぬまで、そして本人にしかわかりません。

錦織選手、大坂なおみ選手の活躍で、テニスを始めるジュニアは確実に増えているようです。その中で、お子さんに本格的にテニスをさせようと考える親御さんには是非この本を読んでほしいと思います。そうでない方も、この本を読んでいただけたらまた違ったテニス観戦やプレーを楽しめると思います。

この本には書かれていませんが、関口選手が出場しているATPの下部ツアーやITFのトーナメントの運営スタッフは日本ではほとんどがボランティアです。私も少しだけですがお手伝いさせていただいています。テニスは生涯スポーツとして素晴らしく楽しいものです。自分がプレーするだけでなく様々な関わり方があります。より多くの方にテニスを楽しんでいただきたいと思います。

この本が書かれた2016年7月15日現在の関口選手のランキングは381位。彼の挑戦はまだ続いています。昨年の同時期には600位台に落としていましたが、今日現在のランキングは264位、今年の獲得賞金は34,738ドル、生涯獲得賞金は176,187ドルです。

著者の井山さんとは何度もお顔を合わせていますが、親しくお話しさせていただいたことはほとんどありません。私の2学年下で、高校は私とはお隣の県でインターハイに出場されています。現在は闘病中とお聞きしています。次回お会いすることがあればテニスについてたくさんのお話しお聞きしたいと思っています。

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2019年11月27日 (水)

19024.『国境なき助産師が行く』 小島毬奈

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『国境なき助産師が行く』 小島毬奈

学生生活最後の年に、私の人生の恩人であるクラブの先輩がテニスショップを開店しました。私はそのショップの初代アルバイトです。テニス好きの人が多く集う店でした。卒業してからもちょくちょく店にお邪魔させていただき、いろいろな方と知り合うことができました。
その中の一人がK島さん。当時テニス雑誌にコラムを掲載されていたと記憶します。出版社にお勤めの編集者だったのですが、テニス関係の活動はボランティアだったようです。
「本職で不相応なギャラを貰っているので、その分を還元している」というようなことをおっしゃっていたのがずっと私の心に留まっていました。とにかく多趣味でバイタリティ溢れる方です。最近再開することができ、今年春には大阪、秋に福岡でご一緒させていただきました。
そのK島さんにいただいたのがこの本。著者は娘さんです。
ご本人は、

「なぜこんな娘に育ったのだろう。」

みたいなことをおっしゃっていますが、その行動力は親譲りじゃないかと思います。

著者は「国境なき医師団」で難民救助の活動に助産師として参加しています。パキスタンの病院、イラク、レバノンの難民キャンプ、地中海の難民救助船での活動について書かれています。難民たちの置かれている状況は悲惨です。十分な食料もなく、衛生状態は最悪。まともな教育も受けられない。多分私だったら1日、いや数時間も耐えられないかもしれないという現状。彼女は悩んだり、怒ったり、挫けたり、喜んだり、事実と思ったことをそのまま書いてます。今や死語かもしれませんが、看護婦さんが「白衣の天使」なんて綺麗事は一切ない現実です。書かれているほぼすべてからなんらかの刺激を受けるので要約は無理です。

上から目線でもなく、「べき論」を押し付けるでもなく自然体で書かれているように思えます。

世界を見ると「自由な行動をする権利」が誰でも持っているものではないとわかり「幸運」だったと、著者は記しています。私もこの日本で生まれ育った今までの人生を幸せだと思います。後悔や不満はあるけれど。
私たち個人が悲惨な難民の彼ら、彼女らを直接助けることは多分無理でしょう。酷い状況にある多くの人々存在することは知るべきことだと思います。でも、酷い人たちがいるから少々のことは我慢しろ、というのは違うと思います。まずは自分が幸せだと感じ、それを守り、できれば周囲の人に不幸せだと感じさせないという生き方をしたいと思います。今幸せな日本が後退してしまったら難民たちはもっと悲惨な状況になってしまいます。

この本に刺激を受けて、書きたいことがたくさんありすぎて支離滅裂になってしまいそうです。できればお多くの方に是非読んでいただきたいと思います。

 

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2019年11月24日 (日)

19023.『雪が白いとき、かつそのときに限り』 陸秋槎

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『雪が白いとき、かつそのときに限り』 陸秋槎

私が幼いころ、中国といえば実態のよくわからない不気味な謎の国でした。戦後断絶していた国交が正常化されたのは1972年。私は中学生。ほぼ白紙、いや灰色のところに中途半端に入ってくる情報はネガティブでよく解らないもの。「文化大革命」の字面だけみて文化を劇的に進化させる」ことだと思っていました。私が賢ければ「それまでの文化をぶっ壊す」という意味だと理解できたかもしれません。
中国が「改革開放」を言い出したのが1978年。日本や世界に中国が情報を発信し交流に積極的になったと思ったけれど、1989年の天安門事件。やはり中国は怖い国だと認識してしまいます。
私が中国に初めて行ったのは、1995年頃でした。「改革開放」のなかでも「文化大革命」の影響からはまだまだ脱することができていないと実感できました。その頃から毎年のように中国に行くことになり、その変わり様には毎回驚かせられます。
なんとなく中国では本を読む人が少ないのではないか。そしてミステリは成立しないのではないかと思っていました。

この小説は中国人作家による、中国の学校を舞台にした本格学園ミステリです。

主な登場人物は高校生。生徒会の会長とそのメンバーたち。図書館司書の教師。5年前に校内で起きたいじめが原因の自殺が、殺人事件だったのではないかと調査します。屍体発見現場が密室状態にあったので自殺として処理されていました。殺人事件だとすると密室の様な状況を作り出したトリックを解明しなければなりません。当時の事件関係者への聞き込みをしているうち、似たような状況の殺人事件が起こります。
三人称で書かれていますが、ほとんどが賢くて大人びて生意気とも言える生徒会長視点です。
内容に中国らしさはありません。登場上人物の名前を日本人に変えれば、そのまま日本の学園ミステリとなりそうです。高校生を取り巻く環境は日本とほぼ同じなのでしょうか。中国が謎めいて不気味な国から、日本と同じ様な国になったのか、それとも高校生くらいの人間の本質はどこも同じなのか。

私は本格ミステリは苦手です。特に最近は歳をとってしまったからなのか、現場の状況などを読み込みトリックを解き明かす気力がありません。いじめの描写を読むのも辛いです。それだけが原因ではない違和感を読書中ずっと感じていました。最後にはなんとなくその違和感の正体が分かった様な気がします。
私の好みではありませんが、読後感も悪くなく上質なミステリであることは間違いありません。

 

 

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2019年11月21日 (木)

ホテルニューオータニ

母は大阪のニューオータニが大好きです。いつも気持ちよく過ごさせてもらっているようです。
私にとっても思い出のあるホテルです。そのホテルが今、酷い政権の幼稚なでも許すことのできない疑惑の舞台の一部になっていることを残念に思います。
30年以上前のことです。ニューオータニで挙式する友人が、ホテル側の不手際で予約した宴会場より小さい会場に変更させられることになりました。ダブルブッキングの相手は医師会。敵う相手ではありません。ホテルから提示された落とし前は、一人5,000円での二次会でした。100人以上の参加者を見込んでいたので、幹事の私は会場設定に頭を悩ませていて渡りに船でした。盛大で華やかな二次会になりました。
ニューオータニでの一人5,000円のパーティーはホテルの不手際に対する落とし前、破格の金額設定だということが私の認識です。その後、同格ののホテルと何度かお仕事させていただきましたが、そんな設定で受けていただけたことはありませんでした。
「桜を見る会前夜祭」は会費5,000円だったそうです。ありえない話ではないと思いますが、あくまでも、ホテルになんらかの思惑がある裏の値段設定です。この金額設定だけで政治家の後援会主催のパーティーとしてはアウトです。
首相の説明通りに後援会がホテル側に費用の補填をしていなければ、多くの方が指摘されているように、ホテルから政治家に対する利益供与になります。相手が総理だからとか内閣府だから上得意でなんらかのメリットがあるから値引きしたとしたらホテル、後援会とも有罪確定だと思います。
後援会が正規の金額をホテルに支払っていたとすると、首相有罪確定です。
国が発注する他のイベントで補填していたとしたら…。
現在のところでの首相の説明では、真相を知るには全てホテルがなんらかの資料を提示する必要があります。姑息としか言いようがありません。
東京のニューオータニさんともお仕事させていただいたことあります。まだ若僧だった私の無茶振りに丁寧に対応していただき、パーティーは大成功。クライアントにも感謝されました。お高くとまっていると思っていた担当者の方は、実はとても良い方でした。もちろん、対価はしっかり請求ありました。この問題で対応されているニューオータニの社員の方にはお気の毒としか言いようがありません。

昨日、これを書き始めてからの一日で政府関係者のこれまでの発言が事実と違っていたことが次々と明らかになっています。言い逃れのための嘘をついていたとしか思えません。
国としてもっと大事なことがあるだろう、こんなことで目くじら立てるなよ。という方が一部見受けられます。その通り全くレベルの低い問題だと思います。
でも、これをレベルの低い問題だと許してしうことはできません。法律を守らない、嘘をつく首相やそれを擁護する政党に国を任せられますか?

現政権は政治家として、いや人間としてもっとも大切なことをないがしろにしてしまっていると思います。そして、もしそれを国民が許してしまっているとしたらとても悲しいことです。

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2019年11月18日 (月)

19022.ペンペンが語る 原発物語

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『ペンペンが語る 原発物語』 小谷けん

今年春以来ほぼ毎日テニスしています。ベテランの大会にも出ていますが、全く勝てません。それでも懲りずに今年あと2大会エントリーしています。
私以上に大会にでている後輩がいます。私同様、彼もなかなか勝てません。今年の彼の数少ない勝利は私との対戦。彼と組んでダブルスにエントリーしたら申込者少数で不成立。ついでに申し込んだシングルス初戦で彼と当たってしまいました。完敗でした。
試合会場で顔を合わせお互いの不甲斐なさを慰め合っています。
ちょっと、いや、とてもユニークな奴です。私も変わり者だと思われていると思いますが、間違いなく私以上です。使っているラケット、着用しているテニスウエアは30年以上前のモデル。現役時代の松岡修造が着ていたようなピチピチの短パンです。スマホもガラケーも持っていません。連絡の手段はパソコンのメールです。

そんな彼の処女作がこの『ペンペンが語る 原発物語』です。脱稿したのは聞いていたのですが、発行されたとのメールをもらったので早速購入しました。
帯には「いま、知っておきたい原発の真実。」とあります。タイトルと併せて原発関連のドキュメンタリ、または告発物という印象を受けるかもしれませんが、これは「小説」です。
大学4年生の「僕」にペンギンの「ペンペン」が原発のこと、日本の戦後史、核兵器のことなどを語ります。
ペンペンが語る内容は、私が概ね事実であったのではないかと思っていることと重なります。私は原発要らないと思っています。推進し、継続しようとしている現政権や経済界のことは大嫌いです。著者はもっと過激に嫌っているのだと思うのですが、この本では陰謀論っぽいところは抑えているように思います。本人談「原発の歴史や悲惨な現状を、ちょっと教養を高めたい主婦、本好きな中学生も含めた中高大学生まで読めるように書いた社会派小説」です。
上から目線ですが、「よう書いたな」ってのが感想。とにかくこのボリュームで書いて本にしたのことには尊敬の念。私にはできないと嫉妬も感じます。
付き合いのある人が書いたものについて批評とか感想とか書くのは難しいですね。でも、まあ、この本はトンデモ本とかでは全くなくて常識的なことが書いてあると思うので興味ある方もない方も、是非読んでいただきたいと思います。

 

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2019年11月 7日 (木)

19021.サイコセラピスト

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『サイコセラピスト』 マクジョージ

身近に精神科勤務経験のある看護師がいるので、精神科病棟での勤務の辛さは聞いています。暴力的な傾向を持つ患者さんへの対応は命がけで、患者さんに殺されてしまった看護師もいます。正常なコミュニケーションを取れないのが最大の問題。
彼女曰く、
「1対1だと人間としての対応をしようと思うけど、担当患者の数が多くなるとそれができなくなって辛い」
ほぼ投薬しかできることがなく、暴れたり、内臓疾患などの治療のための点滴針を抜かれたりすると拘束するのも本意じゃないけど仕方ない。
治療の効果を実感できることは少なく、達成感を感じることは稀のようです。

『サイコセラピスト』というタイトルは主人公の職業です。日本では「心理療法士」とか「臨床心理士」などにあたります。最近では「公認心理師」という国家資格があるそうです。看護師でも医師とも違うようで、私たちには分かりにくい仕事です。

6年前に夫の顔面に銃弾を撃ちこんだ画家。事件以後、彼女は全く口を開きません。主人公のセオは彼女とコミュニケーションをとりたいと考えます。そのためには彼女自身を知ることが必要だと周辺を調査をします。まるで警察や探偵のように。
タイトルからなんとなく、この作品はサイコスリラーっぽいのかと思ったのですが、完全に上質のミステリでした。その結末には完全にしてやられました。

殺人犯が精神疾患とされ罪を免れるというのは常に微妙な問題を孕みます。特に被害者の親族などはやるせない思いを持つことは間違いありません。
私は思います。犯罪者とされる多くの人は病気ではないかと。少なくともビョーキであると。罪を犯した罰に身柄を拘束するのではなく、身柄を拘束し病気を治療するという考え方であれば世の中少しは良くなるのではないか、などと考えたりするのです。

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