09010.都筑道夫ポケミス全解説
小森収編集 フリースタイル
ハヤカワミステリマガジンの最新号の書評に掲載されていたのを読み、2700円もするのでちょっと迷ったのですが、自分への誕生日プレゼントとして買いました。装丁はポケミス・スタイルですが、フリースタイルというところから発行されていて、570ページもあります。もちろん凄いのは厚みだけでなく、中身は貴重な文章ばかりです。1956年から58年の3年間に書かれたものですが、その分量と中身の濃さは驚愕物。インターネットどころか、電話でさえも珍しかった時代に海外の小説についてこれだけの情報をどうやって集めたのでしょう。いったい都筑さんの頭の中身はどうなっていたのだろうかと、ますます尊敬の念は深まるばかり。彼は私にとってほとんど神と同等の存在です。
いまだに議論尽きることのない、「ハードボイルドとはなにか?」については、J・R・マクドナルド『犠牲者は誰だ』の解説に再録されている、50年も前に書かれた都筑さんの本質論以上の答えはないと思います。
『彼らは殴りあうだけではない』と題された本質論で、都筑さんは「ハードボイルド文学を歪められたロマン文学だと思う」と書いています。この派の文学の技巧上の秘密は「行動だけを正確に描写する」ことで、口に出して感情を言ってしまうと、つまらない感傷としか聞こえないというのです。
なるほど、私がハードボイルドの主人公に思い入れるのは、つまらない感傷を排除しながら、しみじみとした思いが伝わってくるからです。実際、無口で女性に対して感傷的または情熱的をいえない人間はモテないでしょう。でも、彼らはモテるのです。ここに私のハードボイルドに対するロマンがあるのです。洒落た台詞はいくらでもあるけど、それを理解してくれる女性は稀です。若い頃はそのことがわかっていなかった。男の本質を女性に理解して欲しいと思いつつ、現実には不可能に近いことを知っている。そんな人のための文学が「ハードボイルド」なんでしょうね。
いつもは読了したものをブログにアップしているのですが、この本は例外です。まだ読了していません。興味のあるものだけを読んでいます。ハードボイルドと呼ばれるジャンルのものが中心になります。チャンドラーやロス・マク、フェア、カーター・ブラウン、フレミング、等々。都筑さんの解説は読了後に読むと再読したくなり、本文を読む前に読むと、その面白さが倍増し、解説だけ読んだらその作品を読みたくなって、いてもたってもいられなくなる。
父親が書斎に全部ある、といっているポケミスを読むのを老後の楽しみだと思っているですが、まずは都筑さんが解説を書いているものから読んでみようと思います。ますます老後の楽しみが増えました。
こんな本を出す出版社って、と思いフリースタイルについてちょっと調べてみました。当然ハヤカワが出していると思っていたのですが。HMMに連載されていた都筑さんの「推理作家のできるまで」もここから出ていたんですね。私にとってはうれしいこだわりのある編集者がほぼお一人でやっている出版社のようです。彼が私より若いことにびっくり。頑張って欲しいものです。
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