08015.ローマ人の物語33
迷走する帝国[中] 塩野七生 新潮文庫
浴場建設で有名なカラカラ帝が遠征中に部下から殺されてから、兵士による皇帝殺しが続き、元老院議員ではない軍人皇帝が続出。政治を長い目で見ることができなくなり、ついに皇帝ヴァレリアヌスがペルシャに捕えられます。
作者はこの時期のローマ衰亡の原因の一つが、皇帝カラカラの「アントニヌス勅令」により属州民にも市民権が与えられたことだと考えているようです。ローマには奴隷が存在したので、人間を差別していたように思われがちですが、そこに存在したのは「差別」ではなく「区別」だったようです。政治家、軍人、ローマ市民、一般市民、属州民、奴隷がそれぞれの立場をわきまえていたことが、広大なローマ帝国を安定させていた要因でした。属州民にも市民権が与えられたことにより、その立場が曖昧になり、それぞれが無責任になってしまったのではないでしょうか。区別が曖昧になるとそこに格差が現れます。他と差別化する指標が「金」「力」になってしまうんですよね。
千年以上も前の話で、いまさらその内容を変えられるわけではないのに、読んでいて歯がゆい思いをしてしまいます。ローマ人と筆者の持つ魅力からなんでしょうが、今、私たちが同じような閉塞感の現実を目の前にして、何も出来ない歯がゆさと重ねてしまうからかもしれません。
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