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2006年12月10日 (日)

06031.珍奇絶倫 小沢大写真館

Blog061210小沢昭一   ちくま文庫

著者の小沢さんは私の父の同級生だそうです。遊びを知らなかった父が小沢さんに頼んで「玉の井」に連れて行ってもらったことがあるそうです。小沢さんは慣れているので玉の井の路地をスイスイ行ってしまい、父は袖を引かれてなかなか前に進めず、抜けたときにはシャツの袖がなかった、という話を聞いた覚えがあります。

小沢さんは俳優さんで写真館のセガレで、民族芸能、風俗の研究者です。この本は写真+取材集。風俗を画像と言葉で切り取っています。ラジオ番組「小沢昭一的こころ」で知られる、おしゃべりの名人ですから、この本の写真も文章も素敵で、しかも記録、資料としても素晴らしいものです。娼婦、ゲイ、ストリッパーなど、世の中で偏見を持たれる人々に対する愛情が伝わってきます。

ちょっと長めの引用です。

進駐の置き土産?でもありがたいのは、平和と性の解放だ。‘鬼畜米英’が残したものでも、いいものいい、ありがたいのはありがたい。

日本人は負け慣れていないから、負けたが故にそうなったことに、ある屈辱感を持っているが「負けるが勝ち」ってことばもあるじゃないか。負けたおかげで、世の中、昔よりは絶対よくなった。

もっとも、その後、またぞろ勝ちたくなった。戦争ではなく経済というやつで。

GNPとかいうものの、世界2位の勝利だってさ。ほら、そのおかげで、日本の‘土’と、日本人の‘いのち’がメチャメチャになりつつある。「公害ハンタァーイ」と騒いでいた頃が、まだ花だったなァというように、いずれ、日本の自然と命が根だやしになるにちがいない、このままなら。

だから、

戦争だけじゃなく、経済にも、負けましょうよ。貧乏の国でいいじゃない。国の中の貧富の差がひどいのはお断りだが、みんなで貧乏になろうよ。いまから4,50年前くらいの貧乏になろうよ。・・・・・・・・・ええと、何の話だったっけ。

小沢さんと私の父は、終戦直後の新制大学で同級だったそうです。軍国主義の中で命を捨てろと教育されて育ち、いきなり新しい風の中に放り出された世代です。私自身も貧乏でいいじゃないか、という考えに賛成です。政治や経済を引っ張っていく人の中心が戦後育ちの人たちになって、戦前の恐い時代が蘇ってきそうな気がして心配です。小沢さんの気持ちを私達息子世代も引き継ぐべきだと思います。

登場する人々の言葉は、今の政治家なんぞに比べると、含蓄があり何よりもこだわりと責任感が伝わってきます。 この本を読んで、写真を見れば、貧乏でいいじゃないかという気がするのは私だけではないでしょう。風俗の世界も最近は味気ないものになっているような気がします。金や物じゃなく人間を大事にしましょうよ。そんな気にしてくれる一冊です。

あとがきでは、私の出身地の風俗街をめぐっておられます。私も一度お供させて欲しいものです。

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